■ 中国音響機器メーカーがスタックスを買収!?

日経新聞のニュース記事↓にはびっくり。ここまで中国企業が目をつけているとは驚きだ。

<2011.12.11の日経新聞の記事>
中国音響機器、日本企業を買収。中国の音響機器メーカーの深セン市漫歩者科技(広東省)は9日、日本のヘッドホンメーカーのスタックス(埼玉県三芳町)を買収すると発表した。買収額は1億2千万円。自社の低コストの生産技術とスタックスの高い技術を結びつけて販売拡大を図るという。中国企業が優れた技術を持つ日本企業を買収する例が相次いでおり、今回の買収もその一つ。
スタックスの目黒陽造社長が保有している全株式を買い取る。漫歩者はスピーカーやイヤホンを生産する深セン証券取引所上場企業。2010年の売上高は約7億1900万元(約88億円)だった。同社はスタックスの持つ静電型と呼ばれる技術の高さに着目。漫歩者によるとスタックスは新製品の発売の遅れで10年は営業赤字に陥ったが、11年は黒字基調となっている。


スタックスは、ちょっとしたオーディオファンなら誰でも知っている、ユニークなオーディオ・メーカーである。
一時倒産のニュースを聞いたが、今は有限会社として再建し、新製品の製造も続いているはずである。ここまで追いこまれる状況であったのか、
日本メーカーはどこも救済することができなかったのか!?

スタックス社のホームページには今のところ何の言及もない → こちら


■ 小川典子の素晴らしいピアノ録音とSTAX (2001.7.8)


東フィルの定期演奏会のスケジュールを見ると、2001年9月のソロ・ピアニストは小川典子。モーツァルトのピアノ協奏曲第21番、指揮はウラディーミル・フェドセーエフ*である。メリハリの利いたアタックの強いオーケストラが聞けそう。小川典子とはどんなピアニストだろうか?ロンドン定住とは聞いているが、それ以外はまったく知らない。
* 2001.9.19の指揮はデイヴィッド・アサートンに代わった。

ちょうど彼女のCDを聞くことができた。キングレコードの輸入盤、「小川典子、滝廉太郎から坂本龍一までを弾く」 (KKCC-2240、BIS-CD-854)。サブ・タイトルには「日本のピアノ曲80年の歩み」とある。

原タイトルの《Just for Me》は、CDの最後に収められいる坂本龍一のピアノ曲「ぼく自身のために」(1981年)からとっている。冒頭は、滝廉太郎のメヌエット(1900年)。邦人による最初のピアノ曲とのこと。CDには全21曲が収められている。現代の耳で聞くと、いずれも習作の響きが強い。習作から始まって、日本旋律を素材にエキゾチシズムを訴えるもの、ヨーロッパの新しい響きに影響されたもの、と日本のピアノ曲の軌跡をたどっている。そこここに、ラベル、ドビュッシーが聞こえる。坂本龍一はメシアンだろうか。

小川典子の演奏は淡々としたものである。一聴して、ダイナミックレンジも狭い感じであるが、じっくりと歌うということか。過度にセンチメンタリズムとかエキゾチシズムはない。このCDで一番楽しめたのが、短い坂本龍一のピアノ組曲。メシアン?を思わせる華麗なピアニズムである。

ところで関心したのがこのピアノの録音。素晴らしい抜群の録音である。ピアノの響きは正にスタインウェイそのもの。艶があって、響きが深い、輝きがあり、音に粒だちがよい。もちろん演奏そのものが優れているのは言うまでもないが。

早速、レコーディング・データを見ると次のようである。
1996-12-27/28 at Danderyd Grammar School(Danderyds Gymnasium),Sweden
Balance engineer/Tonmeister:Ingro Petry
2 Neumann KM 143 and 2 Neumann KM 130 microphones;Studer 961 mixer;
Fostex D-10 DAT recorder,Stax headphones

ダンデリド・ギムナジウム(Danderyds Gymnasium)とは、室内競技場であろうか、いずれ由緒のある場所であろう。しっかりした石造りの建物でなくてはこんな響きはでない。日本の中学校の体育館のイメージからは、このピアノの響きを想像することは100パーセント無理。シンプルな機器構成であっけらかんと録音しているようである。ノイマンのマイク4本に、ミキサーとDATだけとは。さらに注目したのが、Stax headphones。かつて愛用したスタックス (STAX)のイヤー・スピーカー(ヘッド・フォン)にこんな所でお目にかかろうとは!

オーディオ黎明期から一貫してコンデンサー型を旗印に情熱を注いでずーと頑張ってきたのがスタックス(STAX)である。コンデンサー型とは、簡単に言えば、スピーカーであれば重い紙の振動板の代わりに、薄くて軽いマイラーフィルムを使う方式。軽々とした繊細な音が特徴。初めて耳にしたときの、頭全体がそのまま音に包み込まれるような響き、交響曲であればオーケストラの真ん中に放り込まれたような音場感が忘れられない。

コンデンサー・ピックアップを実用化したのは1952年。社名も当初は昭和光音工業だったが、スピーカーの製品化(衝立型)に成功した1964年にスタックス工業に変更。なおスタックスではヘッドフォンとは言わずにイヤー・スピーカーと独自に称している。当時からヨーロッパのプロの現場で使われているとの噂があった。スウェーデンのBISでは今も使っているというわけだ。いつだったか倒産したとの噂があり、その後、雑誌などの広告も目にしなくなってしまったのは残念。

写真に手持ちのイヤー・スピーカーを写した。今は調子がいまいち、コンデンサー型は湿気に弱いのが欠点である。

◆CD (BIS-CD-854) 収録曲一覧
(1)滝廉太郎(たき・れんたろう)(1879-1903) ・メヌエット・憾み
(2)箕作秋吉(みつくり・しゅうきち)(1895-1971) 花に因んだ3つのピアノ曲 ・夜の狂想曲・さくら さくら・春のやよい
(3)菅原明朗(すがはら・めいろう)(1897-1988) ・水煙
(4)橋本国彦(はしもと・くにひこ)(1904-1949) ・雨の道・踊り子の稽古帰り・夜曲
(5)清瀬保二(きよせ・やすじ)(1900-1981) ・琉球舞踊
(6)金井喜久子(かない・きくこ)(1911-1986) ・琉球舞曲「月夜の乙女たち」
(7)早坂文雄(はやさか・ふみお)(1914-1955) ・秋
(8)小山清茂(こやま・きよしげ)(1914-) ・かごめ変奏曲
(9)矢代秋雄(やしろ・あきお)(1929-1976) ・夜曲
(10)中田喜直(なかた・よしなお)(1923-2000) ・変奏的練習曲
(11)坂本龍一(さかもと・りゅういち)(1952-) ・ピアノ組曲 ・ぼく自身のために

◆スタックス (STAX)へのリンクはこちら



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