■ 「進化論的文章術」とは 文章作成 5つの基本ルール (2005.6.13) 訂2 2005.7.9


いまIT時代。情報は瞬時に世界中を駆け回り、インターネットにアクセスすれば、膨大な情報を簡単に手に入れることができる。まず目に飛び込んでくるのは、画像を中心とする見栄えの良い情報である。しかし、インターネットとはいえ、文字情報の重要性は変わらない。情報を正確に表現し相手に伝える――文章によって――技術はインターネット時代にあっても第一に要請されるものである。社会人であれば、あらゆる場面で、文書を媒体として仕事を遂行することが要求される。学生であれば、レポートとか卒業論文とか、より密接なかかわりがあるはずだ。


情報を正確に伝えるためには、一定の技術――「文章術」というのか――があるのだろうか。文章を書くための、何か基本的ルールと定義されるものがありそうだ。世に、作文技術とか、論文の書き方とか、文章作法とか、さまざまなタイトルで、文章術を標榜する書籍があふれているのだから。


今なお名著の誉れ高い『知的生産の技術』によれば、著者・梅棹忠夫は「文章をかくというのは、情報伝達行動である。文章の問題は、情報工学の問題としてかんがえたほうがいい」と言っている。情報というのは、知恵、思想、かんがえ、報道、叙述など、ひろく解釈していいという。知的生産というのは、頭をはたらかせて、あたらしいことがら――情報――を、ひとにわかるかたちで提出すること、だと。


生物の歴史は40億年といわれる。この40億年間は、生物の情報処理能力を、とぎすまし、より洗練されたものに高める過程であったのではないか。生物の目的は、この世を生き延びて、自らのDNAを子孫に伝えることだろう。厳しい環境を生きぬくためには、身に迫る危険――より強い動物に捕食されること、天変地異に遭遇することなど――を素早く察知し、直ちに的確な行動にうつすことが要求される。まさに高度な情報処理が要求される所以である。

太陽系の惑星である地球の生物は、太陽光線のもとで進化した。したがって特に、視覚にかかわる情報処理のメカニズムが発達したのは間違いない。ヒトの行動をみても、目から入ってくる情報はとくに効果的である。広範囲の情報を瞬時に判断し、変化(危険)を検知することに役立ている。弱い動物であったヒトは、情報処理能力が抜きんでていなければならなかった。

ヒトは言葉・文字を発明した。文章を読むとき、とくに視覚情報の処理能力が要求されるのは言わずもがなである。ヒトの情報処理の基本メカニズムを理解し、それに則って文章を書けば、相手にスムーズに情報が伝わり、わかりやすいものとなるはずだ。

ヒトを情報処理マシンとしてとらえ、そこから人間心理の働きを研究するのが「認知心理学」である。認知心理学によれば、五感から入力された情報は、いったん短期記憶で処理され、そのあと長期記憶に送られて確実に記憶されるという。認識とか理解の働きは、短期記憶が主体となって行われる。小さな記憶容量を効率よく使用して、素早く結論をだす。そのために、とりあえず仮のモデル(メンタル・モデル)を想定して、認識を進める方式をとっている。

この認知心理学で得られた成果をもとに、分かりやすい文章を書くためのルールを考察すると、いくつかの基本的なルールに帰着すると判断される。
……これを強引に「進化論的文章術」と称しています。対象とするのは、いわゆるビジネス文書とか、仕事文書とか、技術文書といわれるものです。

この文書作成のための基本ルールを並べてみよう。

(1) 冒頭案内 ……まず最初に全体の案内図を提示する
(2) 重点先行 ……最初の3行で勝負。結論/主題を先頭に置く
(3) 三等分割 ……分ければ分かる
(4) 短文連結 ……ショートパスをつなぐ
(5) 主題再現 ……もう一度念を押す




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