■ 『ルネ・フレミング魂の声』 METプリマドンナの自伝 (2007.10.28)





ルネ・フレミングは、米国生まれのオペラ歌手。近年はメトロポリタン歌劇場(MET)のプリマ・ドンナとして活躍。引っ越し公演に併せての来日もあったようだ。得意のレパートリは、モーツァルトからR・シュトラウスと幅広い。フレミングに個人的にも注目するようになったのは、ドヴォルザークのオペラ《ルサルカ》のDVDを手に入れてからである。




パリ・オペラ座公演(2002年)をライブ収録したこのDVDで、フレミングは主役の水の精・ルサルカを歌っている。スラブ民話をもとにした水の精と王子との悲恋物語。フレミングは瑞々しい歌唱・演技である。まさに第1幕あたりは適役ではないかと感じる。第2幕以降は、演出の様式もあって、なぜか違和感を抱くのはしょうがないか。



フレミングはニューヨーク州の出身であるが、本書を読むと、母方からはチェコ・プラハの東欧の血が流れているようである。ルサルカがぴったりなのも宜なるかな。オーディションで《ルサルカ》の「白銀の月」を歌うようになってから、ようやく物事がうまくまわるようになってきたという。このアリアはそれほど有名ではないが、フレミングの声には完璧にマッチしていたようだ。

本書はやはり、アメリカ・ドリームの成功物語のひとつであろう。何事もなせばなるという、上昇意欲の強い国民性が反映されている。歌い手をめざして勉強を始めたころ、フレミングは先輩たちの自伝をむさぼり読んだという。どうやって勉強したのか?駆けだしのころのオーディションとか、ちっとも認められないことをどうやって切り抜けたのか?

自分で書くしかないという結論に達したというが。本書は、人生の物語ではなく、声の自伝だという。声が天職であり、積み重ねてきたキャリアだと。


◆『魂の声 プリマドンナができるまで』ルネ・フレミング、中村ひろ子訳、春秋社、2006/4


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