■ 『「偶然」の統計学』 偶然は必ず起きる  (2016.2.18)





こんな偶然が起きるんだ、との日常経験はよくある。昨夜、飲み屋でオペラのウンチクをたっぷり聞かせてもらったばかりの先輩に、翌日のコンサート会場でばったりと顔を合わせるとか。
本書にあげられているのはこんな例だ……。男がはしごから落ちて脚の骨を折った。同じ時間に息子が壁を飛び越えようとして脚の骨を折った。どちらのけがでも折れたのは左脚だった、とか。スウェーデンの女性が、結婚指輪をなくした。その16年後、庭でニンジンを引き抜いたところ、そのニンジンがダイヤの埋め込まれた彼女の白金の指環をはめていた。


つぎのような法則を知れば、いかなる現象も、かならず起きるということが理解できる。「尋常ではない」出来事にもほとんど驚かなくなるだろう

@不可避の法則。何かが必ず起きるということ。「可能な結果」のそれぞれの起こる確率がきわめて小さくても、そのうちのどれかは必ず起こる、ということ。

A超大数の法則。機会の数が十分にたくさんあれば、どれほどとっぴな物事も起こっておかしくない、ということ。偶然を探す期間を十分長く取れば、そうしたことが、起こってもおかしくない。膨大な数の機会を手にすることになるのだから。
マーフィーの法則は、「起こる可能性のあることは、起こる」と言われる。超大数の法則の特殊ケースと考えられるだろう。

ほかにも次のような法則がある。
・選択の法則。事象が起こったあとに選べば確率は好きなだけ高くできる。
・確率てこの法則。状況のわずかな変化が確率に大きな影響を及ぼすこと。環境に生じたわずかな変化が確率に大きな影響を及ぼす。そうした変化がとても小さい確率値を一転させるのだ。
・近いは同じの法則。十分に似ている事象は同じものと見なされる。そうすることで、潜在的な一致の数を増やすのである。

分布の形がわずかに変わることで、きわめて低かった確率が、普通の出来事のレベルにまで変わりうる――いつもの列車が遅れる確率とか、にわか雨に降られる確率、といったレベルに。正規分布は便利な数学的抽象概念だが、自然界で起こっていることを表す完璧なモデルではない。


◆ 『「偶然」の統計学』 デイヴィッド・ハンド/松井信彦訳、早川書房、2015/8

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