■ 『神風 (シンパラム) がわく韓国』 情報化時代は韓国の時代 (2004.5.16)

本書は2001年10月に刊行された。既に3年前である。ドッグイヤーの時代にいささか古新聞のにおいはあるのだろうか。いやむしろ、著者の予想は当たっているようである。情報化社会、変化の激しい社会、速い決断が要求される時代になると、韓国の人々の情緒、それに基づいた文化はけっしてマイナスにならず、新たな可能性をひらく原動力になりうるのではないか、と著者は言う。

韓国の若者文化で流行しているのが、ノレパン(カラオケ)、PCバン(インターネットカフェ)、ハンドホン(携帯電話)だそうだ。いずれも普及率は世界トップクラス。なかでも高速ブロードバンドの普及率は世界でも断トツである。著者は、これらの共通点として「いずれもネットワークの形をとる」と喝破する。「集団」の中に「個人」が存在する。まさに韓国の社会構造そのものではないかと。これからの水平型のネット型社会――21世紀の情報化社会――は、まさに韓国の伝統的な文化・社会にぴったりだと予想する。

1980年以降わずか10年の間に「韓江の奇蹟」と呼ばれる急発展を成し遂げた。1997年のIMF危機には、大多数の国民が持っている金製品を自発的に放出し、実に250億ドルもの外貨を獲得した。全国民が一体となって国家の危機を乗り切った。いま、サムスン電子は大胆な投資によって、日本勢を蹴散らしてDRAMのトップメーカに躍り出た。株価総額はソニーを追い抜いたとのニュースも聞いた。韓国人は危機とチャンスに強い民族なのだ。

著者は、CAD/CAMの技術指導者として1994年の夏から韓国に赴く。最初の2、3年は本当に辛かったという。韓国人の仕事ぶり、言動を目のあたりにした時、これが、あの経済の発展ぶりを「韓江の奇蹟」と讃えられた国の人たちの姿であろうかと。著者の驚きぶりが伝わってくるとともに、観察の鋭さに感心する。

ほめる韓国、叱る日本」だという。日本企業では、上司による叱責は日常茶飯事。いわば「叱る文化」。しかし、韓国では、先にほめてからあとで問題点を注意するやり方をとるべきだったのである。

韓国人は1人だと日本人の3人分の能力を発揮するが、3人寄ると1人分の能力も発揮しない。技術者の一人ひとりは、けっして日本の技術者と比較して勝るとも劣っていない。むしろ優れている。あまりにも「個」が強いため、一人ひとりの持っている知識が「その人だけの知識」になっており、他の人と「共有するための知識」に変換する努力を怠っているのではないかと。


◆『神風がわく韓国――なるほど、なるほど!日常・ビジネス文化の日韓比較』 吉川良三著、白日社、2001/10

◆吉川良三 (よしかわ・りょうぞう) :1940年生まれ。1968年に神奈川大学工学部電気工学科を卒業し、日立製作所に入社。ソフトウエア開発に従事した。CAD/CAMに関する論文を多数発表し、また日本能率協会専任講師、12年間にわたるガイドの執筆などを通して、日本のCAD/CAMの普及に貢献した。1989年にNKK日本鋼管エレクトロニクス本部開発部長として次世代CAD/CAMシステムを開発。1994年8月から韓国三星電子常務としてCAD/CAMを中心とした開発革新業務を推進中。ソウル在住。


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