■ ショスタコーヴィチ 《ムツェンスク郡のマクベス夫人》 (2007.6.11)

大野和士はいまスカラ座で、ショスタコーヴィチのオペラ 《ムツェンスク郡のマクベス夫人》を振っているはずである。
→ 大野和士のスケジュールはこちらに詳しい
このホームページには、イタリア国営放送(RAIradio3)でライブ中継があるとの紹介があったが、どうもパソコンが不調なせいか、なかなかうまく受信できなかった。

つい先頃、この《ムツェンスク郡のマクベス夫人》のDVD(OPUS ARTE OA0965D)をたまたま手に入れることができた。昨年2006年6月にオランダ(アムステルダム音楽劇場)でライブ収録したもの。
主役の2人は、次の通りだが、セルゲイのクリストファー・ヴェントリスはスカラ座公演でも、大野和士の棒で歌っているのは興味深い。



・カテリーナ(ジノーヴィの妻):エーファ=マリア・ヴェストブレーク
・セルゲイ(イズマイロフ家の使用人):クリストファー・ヴェントリス
演奏は、マリス・ヤンソンス指揮 ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団


このオペラをじっくり見るのは初めてであるが、なんと「超」ヴェリスモとも言うべきオペラでないか。見ようによっては体制批判もある。1934年初演のあと、当局から上演禁止の処置を受けたのは理解できる。
ショスタコーヴィチは、1963年に改訂し 《カテリーナ・イズマイロヴァ》として再発表している。


こんな筋である ……地方の商家に嫁いだカテリーナは、夫婦関係もうまくいかず欲求不満の日々。そこに現れた使用人のセルゲイがカテリーナを誘惑し、2人は道ならぬ恋に落ちる。カテリーナは邪魔な舅を毒殺する。逢い引きの場面を見られたため、夫も殺害して土に埋める。2人は結婚式を挙げるが、その場で夫の殺人現場が暴露される。
牢獄へと送られるが、男は、若い女囚に夢中となる。残されたカテリーナは絶望して……

舞台上には、終始「檻」を思わせるセットが置かれ、このなかで劇が進行する。これはもちろんカテリーナの閉じこめられた精神空間を象徴するものであろう。終幕の牢獄にしても、限られた空間のなかで窮屈に演じられる。

エロティックな場面もあり、カテリーナ役は体当たり的な演技だ。音楽は室内音楽的に開始するが、徐々に、ショスタコーヴィチ節が露わになる。木琴とか小太鼓など打楽器の活躍が目立つ。これがショスタコーヴィチ25歳の作曲とは。
第1幕だったか、セルゲイがカテリーナを犯す場面。大音響が鳴り響くが、音楽の趣味は悪い。

ヤンソンスの指揮ぶりが写るが、こちらはやや張り切りすぎではないか。緻密な音楽作りではあるが、オペラとしてはバランスがオケに偏っている。経験不足かも。
大野和士であれば、もっと舞台と一体化してドラマチックに振っているのではなかと思う。


◆ショスタコーヴィチの全作品解説は → こちら


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