■マーラー:交響曲第3番


■ インバル=都響 マーラー:交響曲第3番 (2012.10.27)




インバルと都響の「新マーラー・ツィクルス」に行ってきた。みなとみらい大ホール。2012.10.27(土)


このところの都響は充実しているのではないか。自己評価では国内ベスト・ワンである。本日の演目はマーラーの交響曲第3番。大がかりな曲でなかなか実演に接する機会がないのだが、都響=インバルのコンビに期待は大きい。



座席はRA席なので、ちょうど第1Vnと相対するような位置関係。インバルの指揮ぶりはよく見える。眼前にオケの響きが分離よく展開する。残念ながらチェロやコントラバスはステージの袖に隠れてまったく見えないし音もよく聞こえない。

期待を裏切らない感動的な演奏だった。インバルの指揮も実に的確だ。オケの意識を高揚させ、第1楽章の快刀乱麻とも言える指揮ぶりから、終幕へと向かう。冒頭のホルンの爽快な総奏から始まって、ときに荒々しい響きを乗り越えて、ついに終楽章に至り、すべてを統合して浄化に導くような趣きだ。最終(第6)楽章は、静かだが透明感のある、余計な思い入れのないすっきりした、深々とした息の長い演奏。この交響曲の白眉だと思う。

第2楽章が終わって、ここで独唱/合唱団が入場。第4楽章のソロの池田香織さん(メゾソプラノ)も誠実な歌いぶりでした。バックのオーボエが、悲しみを誘うような独特で印象的な響き。奏法によるのかな。それにしても、この楽章は、独唱・オーボエ・ホルンなどが細やかなしっとりした響きで対話的な雰囲気だ。

オケの細かな演奏ぶりが見えました。木管群のベルアップの様子とか、トランペットや小太鼓のステージ外での演奏…これはすべて楽譜の指定通りなんですね。全曲を通じて、ホルンのホールをゆさぶる演奏が見事でしたね。

<出演>
指揮:エリアフ・インバル、ソリスト:池田香織(メゾソプラノ)、女声合唱:二期会合唱団、児童合唱:東京少年少女合唱隊、管弦楽:東京都交響楽団 コンサートマスター:四方恭子 (2012.10.27)



■ チョン・ミョンフン指揮N響、マーラー:交響曲第3番 (2011.2.12)

NHK交響楽団の第1695回定期公演に行ってきた。
演目はマーラー:交響曲第3番。2011.2.12(土) NHKホール

この第3交響曲、マーラー最長の交響曲とあって――100分近くかかる、実演にはなかなか接することができない。海外オケには途方もないチケット価格に二の足を踏んで手を出していない、という事情もあるかな。最近聞いたのは、2005年でやはり指揮はチョン・ミョンフンだった。オケは東京フィルだ。→ こちら

マーラーの交響曲の最終楽章を比べると、この第3交響曲の第6楽章と、第9の第4楽章が、個人的には双璧だと思っている。第9はどんどん沈潜してゆくかのような静かな終曲である。一方、第3は、清冽な響きが、最後には、陽光がさんさんと降りそそぐような壮麗なフィナーレへと昇華される。幸福感で一杯になる。

チョン・ミョンフンの指揮ぶりは、いつものように端然としたもの。N響に全幅の信頼を置いているのか、テンポも全体的にゆったりしたものである。全曲を感動的に振り終わった。
第1楽章冒頭から、落ち着いたテンポが目立った。前回の東フィルよりもかなり遅いと感じたのだが。コントラバスは12本だか並んでいた。これはチョン好みなのか。第6楽章なんかその威力を存分に発揮したと感じた。N響の金管群の実力をまざまざと見せつけられた。ホルンは安心して聞いていられる。それに今回はトロンボーンの活躍も目立ったか。

アルト独唱の藤村実穂子さんもさすがに素晴らしい。合唱も良かった。
それにしても、チョンがフィナーレを振り終わらないうちにブラボーの声があがったのにはびっくり。気持ちはわかるが、指揮者が棒をおいてから拍手するのが、マナーではないか。まだまだブラボー・フライングがあるとは。

<プログラム>
マーラー:交響曲 第3番
指揮:チョン・ミョンフン
アルト:藤村実穂子
女声合唱:新国立劇場合唱団(合唱指揮:三澤洋史)
児童合唱:東京少年少女合唱隊(合唱指揮:長谷川久恵)
管弦楽:NHK交響楽団


■ マーラー 《交響曲第3番》 チョン・ミョンフンに感謝 (2005.1.9)

2005年1月9日(日)、東フィルの第698回 定期演奏会に行ってきた。オーチャードホール にて15時開演。



マーラー:交響曲第3番
指揮:チョン・ミョンフン
メゾ・ソプラノ:寺谷千枝子
児童合唱:東京少年少女合唱隊
女声合唱:東京オペラシンガーズ


マーラー交響曲第3番の初体験であった。1時間40分にも達する大曲。聴く方も長時間の緊張を強いられたが、演奏する方はもっと大変だったかな。全曲を通して、実に清々しい、陳腐な表現ではあるが、心洗われる演奏であった。いつもはチョン・ミョンフンにやや力任せの指揮ぶりを感じることがあったのだが、当夜はそんなことは少しもなかった。

やはり、テンポの設定がぴったりマッチングしたのではないかと思う。全体にゆっくり目であった。第1楽章は、このゆっくりめのテンポが楷書できちんと書く感じを与え、緊張感を維持させた。自然に対峙して、そびえ立つ山々を隅々まで描き込んでいるのをイメージさせる。ピントをきちんと合わせたカメラ撮影にも思い至る。

それが、第3楽章ではリラックス感を倍増させる効果を醸しだす。さらに、最終の第6楽章になると、一段とゆっくりした演奏。これがまた清澄な弦の響きと一体となって言うことがない。

東フィルも頑張った。ピアニシモに一本芯が通っているように思えた。たまさか東フィルで聞くことのあった腰のぬけたピアニシモではなかった。ダイナミックレンジが広がって聞こえましたね。

ホルン8本の冒頭の斉奏も決まりました。しかし、終楽章に近づくにつれ、ひやりとするスリリングな場面も一部あった。トロンボーン・ソロも活躍、特に破綻はなかった。これで金管群に音量コントロールが一段とスムーズに行われば、東フィルも世界一流ではないか。コントラバス10本も威力的。アルトの寺谷千枝子さんも誠実な歌唱でした。

オーチャードの3階後方(D席)で聴いたのだが、これだけの大編成 (4管編成、合唱を含めて約150名) だと、3階席でオケを俯瞰的に見て分解能の高い演奏を楽しむことができた。


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