■ 『マーフィーの法則』 最悪に備えること、失敗学ではないか? (2005.7.19)


かの有名な「マーフィーの法則」。原著の初版は既に1977年に出ている。80年、82年と続編が刊行された。本書はこの3冊をまとめて訳出したもの。

そもそも、なぜ「マーフィーの法則」と呼ぶのか。本書の解説によればこうである。
1949年米カリフォルニアのエドワード空軍基地で、テスト機が異常を起こしたが、原因は誰かの誤ったセッティングであった。これを発見した、エンジニアのマーフィーが言った台詞「いくつかの方法があって、一つが悲惨な結果に終わる方法であるとき、人はそれは選ぶ」。これが業界関係雑誌に掲載されて、少しずつ一般化していったのだという。

マーフィーの法則とは、「失敗する可能性のあるものは、失敗する」(If anything can go wrong,it will.) という。すべてを悪い方に判断・解釈しようということだ。本書の編纂者によれば、この法則には多数の類似例が存在し、「宇宙の法則が存在する」とまで言うのだが。「最悪に備えよ」というコンティンジェンシー・プランでもあるか、あるいは話題の「失敗学」箴言集かな。

このマーフィーの法則には、発展形がある。
1.見かけほど簡単なものはない。
2.何事も、思っているより時間がかかる。
3.失敗する可能性がいくつかあるとき、最悪なダメージをもたらすひとつが、うまくいかない
4.4つの問題点を見つけて対処すると、すぐに5番目の問題が発生する。
5.悪い状況は、放置しておくと、なお悪くなる。
6.何かをしようとすると、先にやらなければならない何かが現れる。
7.すべての解決は、新たな問題を産む。
8.誰でも使えるものは作れない。なぜなら、バカは思いもよらないことを考え出すからだ。
9.母なる自然は性悪女だ。

本書は、さらに多くの法則 (ピーターの法則とか) からの引用を含め、実に機知にあふれたレファレンスブックでもある。
<情報伝達>につながる法則をひろい出してみよう。
・提案書は、提案者の意図どおりには理解されない。
・誰もが理解できる説明を誤解する人がかならずいる。
・情報は組織の上部に行くに従って劣化する。
・会議は、議事録を得て、時間を失うイベントだ。【minute(s):@分、A議事録】
・決断しないことを決断するのは決断であり、決断しそこなうのは失敗である。
・単純な考えは、もっとも複雑な言い回しで表現される。
・うまくいかない場合に備えて、かならず「補足説明」という逃げ道を用意せよ。
・パレトの法則(20/80の法則);全顧客数の20%からの売り上げが、総売り上げの80%を占める。全部門の20%にかかる経費が、総経費の80%を占める。
・変更可能なものは、変更する時間がなくなるまで、変更される。
・ノートを読み直すと、もっとも大切な部分が判読不能である。
・間違いのない大切な手紙は、郵送すると、間違いのある手紙となる。


◆『マーフィーの法則 現代アメリカの知性』 アーサー・ブロック著・倉骨彰訳、アスキー出版局、1993/7初版


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