■ 大野和士:グラインドボーン音楽祭2012 (2012.9.26)

ようやくロンドン・オリンピックも閉幕。この2012/8月、大野和士はグラインドボーン音楽祭への出演で忙しそうである。ラヴェルの歌劇で、《スペインの時》と《子供と呪文》のペア公演が10回予定されている。〜2012年8月 4日、6日、8日、10日、13日、16日、19日、21日、23日、25日
公演の様子を、つたない英語でインターネットを検索してみると、新聞などのレビューでも大野和士の指揮は好評のようである。




グラインドボーン音楽祭には、大野和士が登場しラヴェルの作品を振った。その様子がNHK-BSプレミアムシアターで放映された。2012.9.24(月)


演目はラヴェルの2つの歌劇《スペインの時》と《こどもと魔法》。いずれも1幕もので、よく並べて演奏されるようだ。来年のサイトウキネンでもやるとか、聞いたような気がするが。このグラインドボーンも、演出(舞台装置も)もことさらに2つのオペラの対照面を際立たせることをねらったようでもある――《スペインの時》の現実性と、《こどもと魔法》の幻想性か。演出のロラン・ペリは、前回も大野和士と組んで《ヘンゼルと・グレーテル》をやっていますね。

大野和士の指揮ぶりは、いずれも明確なリズムが聞きとれる、メリハリの効いた演奏だったと思う。ときにスペイン風の響きが鮮やか。

《スペインの時》はコミックなのだろうか。舞台は時計屋の店先。壁一面に様々な時計がカラフルにかけられている。大切な役割を担う大型時計が並ぶ。一方で、洗濯物が干されているとか生活臭もかなり。牛はスペインの象徴?

仕事一筋の平凡な亭主と、亭主に愛想をつかしている美人妻。亭主を外出させ、その留守に女房が浮気を目論むというストーリー。ドタバタのあげく、最後の場面では時計屋が、高価な時計を売りつけ、したたかで如才ないことがわかるのが面白い。
時計屋の女房(コンセプシオン)のステファニー・ドストラック(ソプラノ)が歌唱・演技とも魅力的で大活躍。演出も意外とエロティックでは。歌詞も時々それなりの意味がありそうなものがあった。

《こどもと魔法》は対照的な舞台づくり。暗闇のなかからヌット登場するといった感がある。非常に大きな家具――イスとか机。家人も大きい。巨大ママの登場には思わず会場から笑いがもれましたね。宿題なんかイヤとか、お菓子を存分に食べたいとか、動物や昆虫を追いかけるとか。日頃のこどもの行動と夢が幻想的な舞台に表現される。最後はこどもが「ママ!」と叫んでスパッと終わる。結局、魔法の主はママと言うことかな。


【出演】
《スペインの時》
ロバ曳きラミロ:エリオット・マドーレ
時計屋トルケマダ:フランソワ・ピオリーノ
トルケマダの妻コンセプシオン:ステファニー・ドストラック
学生ゴンザルヴェ:アレク・シュラダー
銀行家ドン・イニゴ・ゴメス:ポウル・ガイ

《こどもと魔法》
カトーナ・ガデリア
エロデイー・メシャン
エリオット・マドーレ
ポウル・ガイ
ジュリー・パストロー
ヒラ・ファヒーマ
フランソワ・ピオリーノ
キャスリーン・キム
ステファニー・ドストラック

管弦楽:ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団、合唱:グラインドボーン合唱団
指揮:大野和士、演出:ロラン・ペリ

【収録:グラインドボーン音楽祭歌劇場 2012.8.19】



戻る