■ 大野和士::ウィーン交響楽団 日本公演 (2013.5.24)



<2013.3.28> 大野和士とウィーン交響楽団(VSO)の公演が5月に行われる。公演には、ベートーヴェン、ブラームスの重厚な曲目が並ぶ。ソリストには庄司紗矢香ほかが加わる。シューベルトやマーラーもあり、どこか名曲シリーズといった趣だ。VSOは、先頃亡くなったサバリッシュとも縁が深かったはず。かつてのアナログ・レコードの時代に、このコンビによる演奏がかなり発売されたことを覚えている。大野和士とサバリッシュとは師弟関係だったので因縁がある。ここにも期待がふくらむ。


このところの活動状況は異常である。ジグザグ公演or日替わり公演とでも言ったらいいのか。いま、国立リヨン歌劇場で、ベートーヴェン《フィデリオ》とシェーンベルク《期待》/ダラピッコラ《囚われ人》の歌劇を繰り返し指揮をとっているようだ。日程をみると。3/28に《フィデリオ》をやって、翌日3/29はシェーンベルク/ダラピッコラ、そして翌々日の3/30にはまた《フィデリオ》に戻るといった様子である。このジグザグ公演に何か目的があるのか。どうもそれぞれ3つのオペラに共通点があるようだ。権力にさからった罪で不当に投獄された人びとの解放劇といったことがキーなのか。ダラピッコラの《囚われ人》はヴェルディの《ドン・カルロ》と同じくスペインの宗教裁判にテーマがあるようだ。


<2013.5.13> 大野和士:ブラームスを振る

大野和士の指揮するウィーン交響楽団の演奏会に行ってきた。2013.5.13(月) サントリーホール
期待の公演である。来日公演は既に5/11(日)の愛知県芸術劇場でスタートしているようだ。プログラムは本日と同一。

オケの配置は、コントラバスが最後部に横一列にずらりと並ぶスタイル。《フィガロの結婚》序曲から始まった。さすがに手慣れた演奏の感がある。オケの音色がピカピカではなく、いぶし銀といった様子。当夜の座席位置からは全体バランスを聞き取ることが難しかったのが残念。

ブラームスのVn協奏曲。ソロは庄司紗矢香。細い体から強い音が出てくる。それもかなりの気迫をこめた演奏である。初めにちょっと前がかりかなと懸念したのは自分の誤解かな。第2楽章には若い女性の感性を感じました。いかにもブラームスらしいオーボエのバックアップが印象的。
アンコールはレーガーとのこと。万全のテクニックでした。

ブラームスの交響曲第4番。冒頭は遅めのペースかなと感じたのですが、大野の指揮ぶりは実にエモーショナル。かなりオケを煽っていたのでは。対照的に第2楽章のなかほどで一端テンポが緩むシーン(第2主題?)は恍惚感にあふれ素敵でした。第3楽章から第4楽章へと強靱に盛り上げる。自分の好みからは、とくに第3楽章は演奏が巨大すぎる印象があった。ブラームス最後の交響曲を超えた世界か。

アンコールはシュトラウスUから3曲の大サービス

<プログラム>
モーツァルト: オペラ《フィガロの結婚》序曲
ブラームス: ヴァイオリン協奏曲、交響曲第4番

指揮:大野和士 ヴァイオリン:庄司紗矢香
管弦楽:ウィーン交響楽団

<アンコール>
(庄司紗矢香)
マックス・レーガー:プレリュード ト短調
(大野和士/VSO)
J.シュトラウスU:ワルツ《春の声》、トリッチ・トラッチ・ポルカ、《雷鳴と稲妻》


<2013.5.16> 大野和士:ベートーヴェンを振る

大野和士とウィーン交響楽団の日本公演。東京開催の第1日に続いて、第3日に行ってきた。2013.5.15(水) サントリーホール
本日はベートーヴェン・プログラム。大野のベートーヴェンを聞くのは久しぶりだ。N響で第九があったが。それに、トスカニーニ指揮者コンクールの優勝凱旋公演で《英雄》を聞いた覚えがあるのだが、おぼろな印象だ。→こちら

今日のオケ配置はコンパクトに感じる。よくみるとコントラバスも6台が国内オケで見慣れた上手に並んでいる。それに、弦楽器とか金管楽器など、それぞれのグループも数が少ないようだが。オリジナル編成を尊重しているのか。指揮者の意向があるのかな。

最初のピアノ協奏曲。やはり、P席ではピアノ演奏の鑑賞は不向きだな。素晴らしいタッチだろうなと想像するしかない。弱音の透明感は伝わってきたのだが。この第4番は大野も柔らかな指揮ぶりである。演奏を終わって、つまらないことが気になりました ――ピアノ奏者と指揮者との握手とかハグのような儀式がなかったのでは。

《英雄》について。大野は、大編成でオケをガンガン鳴り響かせるとか、大げさなベートーヴェンをさけていたのだろうか。第1楽章にしても、気合いをこめて指揮棒が振り下ろされたのだが、さりげない印象を受けた。しかし、第2楽章になると、いちだんと高揚感があったと思う。悲壮感ももりあがり、この曲の頂点とも感じられた。スケルツォを経て終楽章に。意外とあっさりとフィナーレを閉じたようだ ――個人の独断的な印象だろうか。ほかの人の感想も伺いたいものだ。

アンコールは第1日とまったく同じ3曲のサービスであったが、……。

<プログラム>
ベートーヴェン:ピアノ協奏曲 第4番
ベートーヴェン:交響曲第3番 《英雄》

指揮:大野和士
ピアノ:インゴルフ・ヴンダー
管弦楽:ウィーン交響楽団

<アンコール>
(インゴルフ・ヴンダー)
モシュコフスキー:8つの性格的小品より“Etincelles”

(大野和士/VSO)
J.シュトラウスU:ワルツ《春の声》、トリッチ・トラッチ・ポルカ、《雷鳴と稲妻》



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