■ 大野和士:プロコフィエフのピアノ協奏曲 第3番 (2011.7.25)

いま大野和士はフランスから帰国して、昨日(7/24)は京都市響でマーラーの交響曲第3番を振っているはずである。チケットをとるチャンスを逸して聞きのがす結果となってしまった。大野の、マーラーへの傾倒ぶりを見るにつけ、残念な感がいっそうつのる。

このところの猛暑がたまらない。エル・バシャと協演した、プロコフィエフのピアノ協奏曲全集。
第3番を聞くと、胸のすくような爽快な演奏に暑さが吹き飛ぶ。エル・バシャの豪快なピアノの弾きぶりもすごいものだ。

雑誌『レコード芸術』の最新号(2011/8月号)を見ると、――図書館でページをめくっただけなのだが、エル・バシャのインタビュー記事が載っている。
2日間の演奏会で全曲を弾いたとのこと。いつものことのようだが、全曲暗譜でやったとのこと。(2004/9月の録音)
大野との共演については、「正確かつエネルギッシュ、私がプロコフィエフに対して考えていることと非常に近いものを持っていて、幸せなときを過ごした」とのことだ。


■ エル・バシャと 大野和士 指揮 モネ劇場オケ 《プロコフィエフ ピアノ協奏曲 全5曲》 (2005.1.23)

このCDはすごい。ライブならではの熱気、協奏曲に欠かせない独奏とオケの対照。ピアニストの胸のすくようなテクニック。これらをすべて高いレベルで満足させてくれる。ピアニストのエル・バシャもすごいが、バックの大野和士も万全だ。きらめく才能のぶつかり合った新鮮な演奏だ。

大野和士のプロコフィエフは以前、NHK-FMでピアノ協奏曲 第2番が放送された(2004.10.13)。ピアノはロシア出身のアナトール・ウゴルスキー(1942年生まれ)。オケは北ドイツ放送交響楽団(NDR)。2004.5.7 Hamburg, Musikhalleのライブ録音であった。



今回のピアノ協奏曲全曲は、エル・バシャ (El Bacha) と共演したもので、オケは手兵のモネ劇場オーケストラ (ベルギー王立歌劇場管弦楽団)。CD2枚組、AMG Records Fuga Libera (FUG505)レーベル。

<録音データ>
  2004.9.24 (1、3、4番)
  2004.9.26 (2、5番)
  ブリュッセル パレ・デ・ボザール (ライヴ録音)


◆第2番
前回FM放送のNDRに比べて、オケの音色が格段に違う。ブラスが明るくきらめく、時に激しい打楽器を思わせるピアノと対立する。プロコフィエフにマッチした音色だ。切れ味の良いオーケストラ。大野のバックアップが光る。

第1楽章は何か神秘的な大きなものを予感させる響きから始まる。そこにピアノが強烈にバリバリと割り込む。ピアノのテクニックが存分に展開される。第4楽章には、懐かしい思いのメロディーが出てくる。混乱から抜け出すように圧倒的なオケと、息詰まるようなピアノの強奏で終わる。

◆第3番
やはり協奏曲として傑作だと思う。演奏もピアノ・オケともに一体となった熱演であった。クラリネットの静かな序奏から、わき立つように息もつかせぬ感でピアノが突き進む。ピアニストの気迫も熱く伝わってくる。テクニックも水際だったものだ。

第2楽章のモノローグ風な静かな場面もしみ込んでくる。終楽章に入って、ロマンチックな展開を経て、終結へ。強烈なピアノの打鍵とオケの色彩的な対立を存分に堪能できた。終演後の聴衆の拍手も、この第3番が一番すごい熱狂的だ。おそらく会場一杯のスタンディング・オベーションではなかったか?

◆第1番
一部に習作的な匂いを感じるものの、コンパクトな聞きやすい曲である。第1楽章に出てくるラフマニノフを思わせるテーマが印象的。このテーマは第3楽章でもう一回出てくる。


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