■ ワーグナー:歌劇《さまよえるオランダ人》


■新国立劇場に《さまよえるオランダ人》の公演を観てきた。(2012.3.8)

2007/3に、この《オランダ人》のレミア公演を見ている ↓。かつてなく引き込まれ存分に楽しめる公演であった。
今回は何故だろう?あの鮮烈な感動を再び得ることはできなかった。
公演初日のせいもあったのか。

歌手がちょっと印象に残らなかった……。カーテンコールでは大きなブラボーの声も飛んでいたが、イマイチと思ったのは自分だけだろうか
指揮者/オケにしても力まかせの一本調子では。今回の東響にはもう一歩の頑張りを期待していたが残念。

合唱だけが記憶に残った――力強い男声合唱とか、2幕の糸車をまわしながらの女声合唱とか、素敵でした。でも、終幕で合唱に異質な声が混じるのを感じたが、PAが入ったのかな

第2幕のゼンタとオランダ人の熱愛の二重唱を聞くと、《トリスタン》に通じる響きがかすかに聞こえて来たなと思った。個人的趣味ではあるがゼンタは体格的にイメージに合わなかった。

指揮のトマーシュ・ネトピルは、1975年チェコ生まれ。ヨーロッパでのオペラ経験も豊富なようである。ベルリンフィルも指揮したようだ(2010年)。
演出の、シュテークマンは、今年公演の《ローエングリン》も手掛けるとのこと。

ダーラントのディオゲネス・ランデスはブラジル出身。2007年よりバイロイト音楽祭に出演し、『ニュルンベルクのマイスタージンガー』ハンス・フォルツ、『パルジファル』ティトゥレル、『ラインの黄金』『ジークフリート』ファフナー、『さまよえるオランダ人』ダーラントを歌っている。

ジェニファー・ウィルソンはアメリカ生まれ。センタはレパートリーでもあるようだ。
オランダ人のエフゲニー・ニキティンは1973年ロシア生まれ。ゲルギエフ指揮マリインスキー・オペラ『ニーベルングの指環』ヴォータンで来日した(2005年)。

公演に集中できないと周りが気になるものだ。隣席の女性客。入口で配られた案内チラシを座席の下に無神経に放置して帰っている。チラシに滑った経験がある者として、もちろん私が始末して帰りました。

<出演>
指揮:トマーシュ・ネトピル
演出:マティアス・フォン・シュテークマン

ダーラント:ディオゲネス・ランデス
ゼンタ:ジェニファー・ウィルソン
オランダ人:エフゲニー・ニキティン
エリック:トミスラフ・ムツェック
マリー:竹本節子
舵手:望月哲也

合唱:新国立劇場合唱団
管弦楽:東京交響楽団


■新国立劇場 《さまよえるオランダ人》

ワーグナーの《さまよえるオランダ人》を観てきた。2007.3.7(水)
楽しめた公演であった。こんなに引きずり込まれたのはあまり経験がない。
ワーグナーの劇的魔術に感染したようだ。真っ赤な帆をはらんだオランダ船が登場するシーン、続いてオランダ人のモノローグなど劇的効果が大きい。合唱が活躍するのも印象的だ。

オランダ人、ゼンタとも素晴らしい出来ではなかったか。歌唱・演技力とも文句がない。
アニヤ・カンペは張りのある高音でゼンタのイメージにぴったりだ。
それと男女の合唱陣が圧巻であった。合唱が一方の主役でもあることを強く印象づけた。

日本人歌手も、遜色なく活躍したが、舵手の高橋淳さんに注目。T幕ではよく通るテノールで抜群だと思った。U幕以降では出番が限られたのが残念。カーテンコールでブラボーを呈したのは少なかったようだが。
ゼンタのアニヤ・カンペは05年にモネ劇場に出演とのことであった。調べるとやはり大野和士の指揮である。

オケは東響であった。かなり気の入った演奏ぶりだが、時にフォルテが強すぎなかったか。テンポを緩めたり、弱奏のとき、緊張感を維持するのが課題と思う。金管も苦しそうな場面が多かったのでは。

帰り際に手にした日経新聞にちょうどこのオペラ評(3/7岡本稔)が掲載されていた。
それにしても、この記事は中途半端な感じだ。
スペースの半分を費やしているのは、途中の休憩のことである。現代では休憩を入れずに上演するのが常識化しているとのこと。新国立劇場で休憩を入れたのは異例の扱いだそうだ。「作品を狂気から解放する試み」って何だ!?ちっとも本質を突いていない。

今回の演出家が言うように、休憩のあとにU幕のゼンタの登場を待つという効果は確かにある。それにぶっ通しの2時間半は辛いだろう。

指揮:ミヒャエル・ボーダー
演出:マティアス・フォン・シュテークマン
合唱指揮:三澤洋史、合唱:新国立劇場合唱団
管弦楽:東京交響楽団

ダーラント:松位浩
オランダ人:ユハ・ウーシタロ
ゼンタ:アニヤ・カンペ
エリック:エンドリック・ヴォトリッヒ
舵手:高橋淳


戻る