■ シャリーノ 《私の裏切りの瞳》

以下は、朝日新聞(2001.5.24)に載った、長木誠司さんの記事からの要約です。
シャリーノのオペラのベルギー初演が当地で話題になったようです。小澤征爾とのタッグマッチもこれから期待したいと思う。オペラのストーリーは深刻なようですが、それにしても「私の裏切りの瞳」という日本語はあまりにも生硬な訳ですね。「瞳」には「愛する人」のようなイメージを持ちますが。

果敢な演目で大野和士がデビュー 小澤征爾が2002年からウィーン国立歌劇場の音楽監督になるのは、クラシック音楽界をにぎわす話題のひとつだが、もうひとり、大野和士が同じ年にパッパーノの後任としてブリュッセルの由緒あるモネ劇場の音楽監督に就任する。40そこそこの大野の年齢を考えるならば、これは小澤に匹敵するか、それ以上の快挙ですらある。

その大野がこの春、就任前に初めてこの劇場のピットに入った。現代イタリアを代表する作曲家シャリーノのオペラ《私の裏切りの瞳》のベルギー初演である。ルネサンスの作曲家ジェズアルドによる妻殺しの事件を扱ったこの作品は、触れればたちまち壊れてしまいそうな繊細な音響のなか、冷ややかな叙情性と官能性をたたえる2幕もの。果敢な実験的プログラムでデビューする大野の姿は、ヨーロッパのオペラ界の新世紀を背負って立つほどの気概に満ちている。当地の新聞評も軒並み好評で、就任を待ちわびる声が大きかった。

フランス系の作品のみならず、シェーンベルクなども含む就任後のプロジェクトも、少しずつ固まっているが、なかでも作曲家ペーター・ルジツカが02年に芸術監督に就任するザルツブルク音楽祭と共同で、日本人作曲家の新作を初演する話が進んでいる。

そのルジツカ自身も、戦後ドイツ最大の詩人を主人公にする初のオペラ「ツェラーン」をドレスデンで3月に初演して大きな話題をまいた。新しい世紀を迎え、オペラ界のメジャー・シーンでも、確実に主役の交代劇が始まっている。



◆Salvatore Sciarrino (1947〜) イタリアの作曲家



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