■ ショスタコーヴィチ 《交響曲第4番》 前進する大野和士 (2006.1.6)







今年は、モーツァルトの生誕250年だけではなくて、ショスタコーヴィチの生誕100年でもあるとのこと。
新日本フィルの第395定期演奏会は、指揮:大野和士でショスタコーヴィチの特集。

2006.1.6(金)、すみだトリフォニーホール。

 江村哲二:「〜武満徹の追憶に〜〈地平線のクオリア〉オーケストラのための」
  (2005・世界初演)
 ショスタコーヴィチ:ピアノ協奏曲第1番 ハ短調、交響曲第4番 ハ短調

まさにフラクタル構造のような演奏会。幽玄とも聞こえる江村哲二の曲に続けて、軽妙なピアノ協奏曲――オケは弦楽とトランペットだけである。最後が巨大な交響曲第4番。オケの編成も巨大であるが、曲の構造もグロテスクなまでに拡大している。そして、この交響曲自身のなかで、さらに重厚と軽妙、極大と極小が織り成しているのだから。

大野和士の指揮は、先夜のマーラーと同じく、一段とスケールが大きくなったようである。
このショスタコーヴィチの第4番。なかなか一筋縄ではいかない曲と思われる。
大野は精密に澄み切った響きにオケをコントロールした。暴力的にまで高まる巨大なフォルテも冷静であり、緊張感が維持される。中間部での弦楽部のすさまじいフーガの合奏もすごい。

第3楽章は、やや異質に聞こえた。メロディーがカラフルになる。
終曲で壮大にティンパニ2台の打ちっ放しで大きく盛り上がる。しかし、これはフィナーレではない。ティンパニが小さく打ち続けると、チェレスタが重なる〜あたかも水面から泡が消える様子だ。弦と木管で静かに全曲を終わる。ドスドスと暴れ回った怪獣がようやく眠りについた感があった。

オケは、舞台一杯の大編成。ハープ2台のほかチェレスタもあり、ティンパニは2組。
女性ファゴット(バスーン)奏者が終始大活躍。金管(ホルン)の崩れが無く安心して聞いていられた。トリフォニーホールの3階席で聞いたが、飽和感がなく万全のパースペクティブであった。


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