■ 東京クヮルテット 演奏会 (2012.2.21)




東京クヮルテットの演奏会に行ってきた。神奈川県立音楽堂 2012.2.21(火)

聴衆の心に響くように、よく考えられたプログラムであった。
ハイドンで始まり、バルトークを経て、ベートーヴェンに至る道のりをたどるよう。
アンコールには、リームともう一度ハイドン――モーツァルトをやると思っていたが。
回帰的なプログラムとなった。

ハイドンのセレナーデを聞いて、音楽的にたっぷりとした満足感をもって帰途に着くことができた。
ありがとう

ハイドンの晴朗さ、計算されてはいるが野性的ではあるが厳しさのあるバルトーク。
そして、晩年の緻密なベートーヴェン。

ベートーヴェンには別れの歌が聞こえる。やはり第3楽章なんか、どう聞いても祈りではないだろうか、そこから、決断を思わせる第4楽章に突入する……このあたりはすごいと思う。

「東京」と名が付くものの、いま日本人が座るのは、第2ヴァイオリンとヴィオラ。いずれも内声部というのが興味深い。クヮルテット全体の色づけに透明感があると聞こえる。円熟していると言ったらいいのだろうか。
とくに、バルトークの演奏は、ホールの特性ともマッチして、一段と鮮烈なものであった。

<プログラム>
ハイドン:弦楽四重奏曲 第81番
バルトーク:弦楽四重奏曲 第3番
ベートーヴェン:弦楽四重奏曲 第15番 op.132
アンコール〜リーム、ハイドン:セレナード

<メンバー>
第1ヴァイオリン:マーティン・ビーヴァー
第2ヴァイオリン:池田菊衛
ヴィオラ:磯村和秀
チェロ:クライヴ・グリーンスミス

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■吉田秀和の言葉を引用しておこう。残念ながら原著を探すことができなかったので、丸谷才一さんの随筆からの孫引きである。

東京弦楽四重奏団が、活動の当初からハイドンの四重奏曲で優秀な演奏を聴かせてきたことは、今さらいうまでもなかろうが、ハイドンが優秀だということの一つの意味は、ここには傑出した第1ヴァイオリンがいたということにほかならない。4つの弦楽器を平等に扱って、どの楽器が出しゃばらず、どの楽器が著しくうしろにひっこめられず……というのが、四重奏の書き方の基本みたいなことを言ったって、ありようは、第1ヴァイオリンが要である事実は、否定しようもない。


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