■ ベルリン国立歌劇場公演 バレンボイムの真骨頂発揮 《トリスタンとイゾルデ》 (2007.10.14)


雨の降るなか神奈川県民ホールに出向いた。強い雨との予報であったが、幸いに小降りである。湿度がすごい。ホールにつくと汗びっしょりで、なかなか汗が退かない。ベルリン国立歌劇場の引っ越し公演。演目はワーグナーの《トリスタンとイゾルデ》
2006.10.8(月)

開演は午後3時、終演は9時前であったが、6時間の長丁場の公演であった。
チケット代にしても今回は張り込んだ。いつものコンサートとは大分差がある。20デシベルほどの違いがあるようだ。

今回の来日では、この横浜公演が最初である。ちょっとトラブルもあったようだ。第2幕では舞台の後ろから、何か悲鳴のような声が2回ほど聞こえたが、演出とは思われなかった。第3幕の幕開きでは、オケが既にチューニングが終わっているのに、指揮のバレンボイムがなかなか登場しない。かなりの時間がかかった(10分?)。何かあったのか。オケピットの配置は、第1Vnが指揮者の正面であったようだ。

全曲を通じて圧倒的な演奏であった。バレンボイムの指揮はさすがだ。媚薬を二人で飲むシーンとか、第3幕のイゾルデの「愛と死」など、ここぞという聞かせ所など抜群のバックアップである。オケがうねって聞こえる。オケの共感ぶりが伝わってくる。まさにオペラ劇場オケの持ち味であろう。
幕切れの「愛と死」はマイヤーの絶唱か。闇の中に沈んでいく、バレンボイムも、余韻を確かめながら、静かに指揮棒を置いた。思わず涙が流れました。

ベルリン国立歌劇場では、2002年に《ニーベルングの指環》公演を聞いた経験があるが。→ こちら
今回は、オケの圧倒的な充実ぶりにひどく感心した。バレンボイムの薫陶によるのか、音楽総監督(GMD)の力が大きいようだ。そう言えば、札幌では マーラーを聞いたことを思い出した → こちら

<主要キャスト>
トリスタン:クリスティアン・フランツ
イゾルデ:ワルトラウト・マイヤー ……メゾ・ソプラノ
マルケ王:ルネ・パペ
クルヴェナル:ロマン・トレケル
ブランゲーネ:ミシェル・デ・ヤング ……メゾ・ソプラノ
メロート:ライナー・ゴールドベルク
ベルリン・シュターツカペレ、ベルリン国立歌劇場合唱団

演出は、ハリー・クプファー。舞台には終始、崩れ落ちたor墜落した天使と思われる巨大像が中央に居座り、この翼の上で演技が展開される。この巨像は、ギリシャ神話の「イカロス」かな?と思うのだが。映画「猿の惑星」の幕切れシーンの「自由の女神」をも思わせる。道ならぬ恋をつらぬいた2人を暗示しているのだろうか。
この巨像はゆっくりと回転して時間の経過を示す。翼の上での演技と歌唱は、滑りそうで安定感がないので歌手もつらそうだ。

バレンボイムは暗譜で指揮を通したようだ。オペラグラスで譜面台をのぞくと、汗ふき用の白いハンカチしか見えなかった。
トリスタンはOKだ。第2幕など、センシティブは歌唱ぶり。3幕に向けて控えたのかな。
イゾルデ、今回はメゾ・ソプラノのマイヤーだ。さすがに気品がある。
同じメゾのブランゲーネと競合するので、楽劇としてのバランスは悪いかなと思うが、メゾであるが故に一段と人間的な印象である。ソプラノだと、超絶的な雰囲気が強くなるのではないか?
ブランゲーネも良いのだが、肉体的に堂々としすぎて、侍女の様子にマッチしない。

クーヴェナールは、ちょっと物足りない、くぐもったような声であり声量もいまいち。愚直ぶりが欲しい。
合唱が物足りない。出番は第1幕の水夫の合唱のみであったが
何と言っても、マルケ王が、抜群であった。声量もあるし、存在感、安定感がずば抜けていた。なにより説得力があった。カーテンコールではブラボーを呈しました。


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