■ 《トリスタンとイゾルデ》   (2024-3-20)

期待の公演、大野和士の振る《トリスタンとイゾルデ》を見てきた。2024-3-20(祝・水) 新国立劇場

前回の新国立での公演は2010-12-25。トリスタンはステファン・グールド、イゾルデはイレーネ・テオンと重量級のコンビ。グードルは新国立ではおなじみ、《ニーベルングの指環》のウォータンですね。残念ながら、2023年9月にガンで逝去とのニュースがあった。享年61歳とは若いね!演出は今回と同じくマクヴィガーで変わらず。オケは東フィルから今回は都響である。大野は都響の音楽監督を務めている。

なにより「読み替え」ではなくオーソドックスな公演だったのが良かったですね。手持ちのDVDには舞台を豪華客船に移して楽劇が進行するものもあるが、もう結構ですと言いたい。それにしても、トリスタンとイゾルデの2人は、今回もそうだが、大型重量級のコンビになるのはやむを得ないのだろうか。ワグナー楽劇の長丁場を歌い続けるにはとてつもない体力が必要になるようだ。そもそも「トリスタン悲劇」は北欧生まれのはずだが、若い(幼い)2人の悲恋物語ではなかったか。フレッシュな雰囲気があってもいい。

今回の公演。大野和士のリーダーシップに大きな拍手です。前奏曲の冒頭から緊張感あふれるもの。繊細な弦演奏は都響の都響の得意ワザだが、いっそうセンシティブな演奏。管楽器もよくコントロールされている。あこがれと夢が交錯するような極上の響き。歓喜が爆発する。そして、水兵の合唱があって第1幕へと入る。絶妙の劇構成、ワグナーの作劇手法の円熟ぶりを実現する大野の実力が発揮される。なかでも、第2幕の指揮が見事だったと思います。ここでは遠近感のある舞台が要求されるし、熱愛から剣劇へとダイナミックに展開する。舞台中央に据えられた大きな塔、あれはdankonの象徴と捉えるのは読み過ぎなのかな!?

トリスタンにはちょっぴり疑問。登場から終始、まるで修行僧のような様相である。ずっと黒い衣装をまとったまま、一本調子である。毒盃をあおった後にイメージを変えて欲しいものだ。トリスタンの潜在意識は変わることが無かったというメッセージなのか。自分には、あの前回のグールドのようなりりしい姿が焼き付いていることなのか。マルケ王の余裕のあるたっぷりした歌いぶりに感心しました。オペラグラスをのぞくと、ひげを着けてゃ居るものの意外にも若いのだ。ブランゲーネの藤村実穂子さんには文句なし。

【トリスタン】ゾルターン・ニャリ
【マルケ王】ヴィルヘルム・シュヴィングハマー
【イゾルデ】リエネ・キンチャ
【クルヴェナール】エギルス・シリンス
【メロート】秋谷直之
【ブランゲーネ】藤村実穂子
【牧 童】青地英幸
【舵取り】駒田敏章
【若い船乗りの声】村上公太
【合 唱】新国立劇場合唱団(指揮=三澤洋史)
【管弦楽】東京都交響楽団(コンサートマスター=矢部達哉)
【指 揮】大野和士
【演 出】デイヴィッド・マクヴィカー





■ 以下の写真は新国立劇場のSNSからダウンロードしたもの (ゲネプロの様子)



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