■ チョン・ミョンフン指揮:ワーグナー 《トリスタンとイゾルデ》 (コンサートスタイル) (2013.11.23)



オーチャードホール 2013.11.23(土・祝)

なんとしても全幕を聞きたかったのだが、残念なことに、演奏に接したのは第1幕のみ。よんどころない事情で、第2・3幕は失礼した。
チョン・ミョンフンの指揮、それにコンマスは荒井英治さん。個人的には東フィルの最強コンビと思っている。さすがに指揮台にはスコアが置いてあるようだ。


ピアニシモで前奏曲が始まった。統率力を感じる緊張感のある響きである。しかし、その後どうもオケの音に不満を感じる ――伸びきらない、浸透感がない、等々。どうも座席位置に問題があったようだ。1階のほとんど向かって右の壁際であったが、頭上に2階フロアが迫っている。このカブリの影響だったようだ。

一番の注目はイゾルデでしたが、イルムガルト・フィルスマイアーさんは圧倒的なパワーでした。声が硬質で透明感がありました。ドイツ出身でしょうか?あのビルギット・ニルソンを思わせる北欧の声を感じました。

演奏会形式では、どうしてもオケのパワーが勝り、歌手が埋没してしまうことがある。そんなおそれは微塵もありませんでした。
やはり全幕を聞きのがした未練が残る。


<出演>
トリスタン:アンドレアス・シャーガー、イゾルデ:イルムガルト・フィルスマイアー、クルヴェナール:クリストファー・モールトマン、ブランゲーネ:エカテリーナ・グバノヴァ、マルケ王:ミハイル・ペトレンコ

指揮:チョン・ミョンフン
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団
合唱:新国立劇場合唱団(2013.11.23)



■METライブビューイング:ワーグナー 《トリスタンとイゾルデ》 (2013.9.22)

アンコール2013とのライブビューイングを見てきた。 2013.9.22(日) 東劇

ライブビューイングは初めての経験であった。さすがにMETだけに上演レベルは高いな思った。長時間公演なので午前10時開始の上演を選んだが、終演時には首が痛くなった。スクリーンを見おろすような座席配置であれば、まさにオペラ体験そのものだが。音響的にはやはり映画館の音でした。5.1chサラウンドだったのかな。

本日の《トリスタンとイゾルデ》は2008.3.22の公演を収録したもの。ジェームズ・レヴァインの元気な指揮姿を見られた。前奏曲からゆったりしたテンポである。終幕はもっとうねるような高揚感が私的な好みではある。

やはり、イゾルデの、デボラ・ヴォイトが一番でした。声質も魅力的でしたが、例えば第1幕、媚薬をほした後、表情が一変しトリスタンに対するあたりの演技は抜群ですね。
トリスタンは、当初予定のベン・ヘップナーが体調不良とのことで、急遽ベルリンからロバート・ディーン・スミスが呼ばれたとのこと ――第2幕だかのインタビューで、METのマネジャーが、現在(2008年)世界で、トリスタンを歌えるのは10人程度とのこと。ネットワークがあるので急な代役にも対応できるとのことだった――。無難にこなしましたが、役作りの時間が不足したのでしょうか。ちょっと相撲の九重親方にそっくりとの感想は私だけではないようです。

マルケ王はマッティ・サルミネン!存在感たっぷり、健在でした。
ブランゲーネのミケーレ・デ・ヤング。大柄でした。インタビューでも答えていましたが意欲的です。将来を期待したいですね。名前を覚えておきます。

演出はどうなのか。第1幕冒頭から巨大な帆が舞台全面に張り巡らされている。MET自慢のメカニズムも活躍する様子。しかし尻つぼみだったのでは。最終幕に出てくる彫像?は何なのか、イゾルデもトリスタンに対して演技が冷淡ですね!

それと、マルチ・スクリーン・モードとかの映像方式。ときに歌手の細かい演技を確認できるなどのメリットを感じたが。多数の画面(6画面?)が並ぶときなど、ひとつの画面が小さくなり意味づけがわからない。映像的魅力も発散しない、煩わしいだけである。

スーザン・グラハムさんとかの歌手がインタビューアー。同業とのことで歌手へのインタビューは実感的なもので楽しいもの。歯切れの良いインタビューでした。

<キャスト>
イゾルデ:デボラ・ヴォイト
ブランゲーネ:ミケーレ・デ・ヤング
トリスタン:ロバート・ディーン・スミス
クルヴェルナル:アイケ・ヴィルム・シュルテ
マルケ王:マッティ・サルミネン

指揮:ジェームズ・レヴァイン
演出:ディーター・ドルン
<MET上演日:2008.3.22>



■ アルミンク指揮新日本フィル:ワーグナー《トリスタンとイゾルデ》 (2011.7.18)

なでしこ優勝の余韻のなか新日本フィルの定期演奏会に出向いた。
本日は、ワーグナーの楽劇《トリスタンとイゾルデ》全3幕
すみだトリフォニーホール 2011.7.18(月、海の日)

休憩はあった(25分×2)ものの14〜19時の5時間の長丁場。
AM3:45に飛び起きて、なでしこJapanの決勝戦に臨んだので、
とくに第1幕はきつかったが、なんとか乗り切ることができた。

新日本フィル全力投球といった感があった。
コンサート形式であったが、濃密な重量感たっぷりのオペラを楽しんだ。
日本人歌手の活躍――クルヴェナル:石野繁生、ブランゲーネ:藤村実穂子、が目立ちました。とくに藤村さんは歌唱力といい安定感もダントツでしたね。
それと、幕開きの緊張のなかの第1声で、若い船乗りの声:与儀巧さんも若々しくて良かった。
イゾルデは声量はあったのだが、やや音程不安だったのでは。

アルミンクの指揮については、室内楽的な響きに特徴があるかなと感じたのですが。
弱音効果が客席に浸透するのが、コンサート形式のひとつのメリットかなとも感じた。
とくに第2幕が印象的、2人の逢瀬のあと、やがてマルケ王が登場する場面など。
バックのオケに、いまひとつの色気が欲しいというのは無い物ねだりか。

新日本フィルは熱演。舞台裏を含めて4組(?)のバンダの配置も、とくに第2幕では効果的。第3幕のイングリッシュホルン(牧童の笛)は印象的でしたね
オケの強奏ではガサつきがあり、伸びきらないのが不満。
第3幕ではスタミナ切れなのか、ホルンなどの金管セクションの不安定さが耳についた。
コンサート形式というので、演出は簡素なものだが、舞台背後に投影されたビデオの意図はなかなか通じない。
プレトークでは、音楽をサポートするとかの発言があったが。
前奏曲にかぶせて、出演者のクレジットが延々と流れるのはなぜ?ワーグナーが前奏曲を作曲した意思を考えてほしい。
第2幕の森のイメージはまだしも、第3幕の地球の映像は、何を言いたいのかな

字幕にとまどった。字数に制限があるのは承知だが、難しい漢字が頻出するのは違和感がある。「迷妄」とやらは、要するに心のまよい、ということらしいが。
活字フォントもどうか、たとえば平仮名の「う」他。
それに、スクリーンを利用するのだったら、出演者の立ち位置に合わせて、字幕の配置も左右に変えたりしたらと思った。


<出演>
指揮:クリスティアン・アルミンク
演出:田尾下哲
管弦楽:新日本フィルハーモニー

トリスタン:リチャード・デッカー
マルケ王:ビャーニ・トール・クリスティンソン
イゾルデ:エヴァ・ヨハンソン
クルヴェナル:石野繁生
メロート:桝貴志
ブランゲーネ:藤村実穂子
牧童・若い船乗りの声:与儀巧

合唱:栗友会合唱団、指揮:栗山文昭



■今年の初コンサート:新国立で大野和士の《トリスタンとイゾルデ》 (2011.1.4)

初日(2010.12/25)に続いて、新国立で《トリスタンとイゾルデ》を観てきた。
今日は、皇太子殿下がご来場され全3幕を鑑賞されたようである。

大野和士の指揮は、初日にはやや手探り的な面が感じられたのだが、
今日は確信的な指揮ぶりになってきたな、との印象を受けた。
精密度も格段にアップしたのでは。第2幕の官能度なんかは十倍アップしたかに感じた。

客席は4階なのでオケ・歌声ともによく通る。
トリスタン、イゾルデともに歌唱は万全。終幕までしっかり声が伝わった。
ブランゲーネには今回は好感をもった。スムーズな歌唱だ。

オーケストラについて、一部のインターネットではボロボロの評価であるが、
個人的な評価は悪くない。大きな傷はなかったと思う。かなり頑張った印象である。
もちろん、一層の充実があればいいなと感じた個所はある。
例えば第2幕の2人の静かな二重唱のバックのオーボエなど、もっと深みのある響きが欲しいとか。

演出面も練り込まれてきたようだ。歌手の演技もスムーズである。第3幕のイゾルデの登場など、黒のマントから深紅の衣装への転換など
見事な効果を発揮した。
第1幕冒頭、船が回転する際にどこかにセットがぶつかるのか、ギシギシとかなり大きなきしみ音を発したのは不気味であった。

やはり半裸の十数人の海賊連中は中途半端だ。演出の意図が伝わってこない。
水のなかでバシャバシャやる意味があるのか。



■ 大野和士指揮 ワーグナー: 《トリスタンとイゾルデ》 (2010.12.25)

新国立劇場に大野和士の指揮する《トリスタンとイゾルデ》を観てきた。2010.12.25(土)

待ちかねた大野和士の《トリスタン》
公演初日でもあり会場にも独特の雰囲気があった。

期待を裏切らない素晴らしい公演であった。
これだけの大曲を構成・統合する力、オケを統率する力。
なにより、観客を大きくゆりうごかす力を強く感じた。

それにしても《トリスタン》はワグナーの中でも抜きんでた傑作!
大野の挑戦は足どりの確かなものであった

東フィルのガンバリぶりも特筆すべきものであった。
ほとんど破綻はなかったのではないか、緊張も最後まで途切れなかった。

舞台演出も印象的であった。舞台には終始、水が張られている。
大きな月がかかり、その姿が水面にきらめくのだ。
月は狂気を示すとか。一方、水は……。静と動、対比的でもある。

序曲はゆったりしたテンポで始まった。どこか手応えを確かめるような様子。
オケの緊張を保った静謐感が素晴らしい。

第1幕。分析的な演奏ではなかったか。心理学的演奏とでも言いたい。
静かではあるがオケが雄弁に語っている。
トリスタンとイゾルデの間に、既に相思の感情があることを、明らかにさせるような演奏である。
水面をすべる船の動きが2人の感情にマッチしている。

第2幕。一転して熱情的なほとばしり。大野の指揮も思い切ったものではなかったか。
舞台中央に屹立する大樹は、あきらかに△△のイメージを想起させたのだが。

第3幕。冒頭の低音は、今まで新国立のピットからは聞いたことがなかった深々としたものである。
舞台上に大きくかかる月――トリスタンの感情の起伏にしたがって色合いが変わり、た時間の経過とともに移動する。
終幕のイゾルデの愛の死へでは、ついに月は地平線の下に沈み込む。
イゾルデを歌うイレーネ・テオリンは、ここでガソリン切れの様相。声がしっかり通らない。残念。
最後のピアニシモまで、オケの響きは浸透力があった。

さすがにトリスタンのステファン・グールドは余裕のある歌いぶり。
トリスタンの高貴さをよく出していた。
ブランゲーネのエレナ・ツィトコーワは良いのだが、どこか場違いな印象があった。

初日のせいか、演技面では、なかなか未だこなれていないと思わせる個所があった。
第1幕、2人が媚薬を飲みほすと盃を放りだし直ちにトランス状態に入ったが。ちょっと違和感があった。やはり、一瞬の間が必要だと思う。

<出演>
指揮:大野和士
演出:デイヴィッド・マクヴィカー

トリスタン:ステファン・グールド
マルケ王:ギド・イェンティンス
イゾルデ:イレーネ・テオリン
クルヴェナール:ユッカ・ラジライネン
メロート:星野淳
ブランゲーネ:エレナ・ツィトコーワ

管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団



■ 飯守泰次郎指揮 東京シティ・フィル 《トリスタンとイゾルデ》 (2008.9.23)


東京シティ・フィル オーケストラル・オペラZ 《トリスタンとイゾルデ》に、行ってきた。
ティアラこうとう(江東公会堂)大ホール 2008.9.23(火) 秋分の日。2日間公演の2日目

オーケストラル・オペラとは、簡素な演出があるものの、要するに演奏会形式のこと。オケは舞台の上で演奏するが、さらに一段と高い階段状の舞台が作られていて、歌手はその上で演技をする。背景にはプロジェクターで静止画が投影されるスタイル。

個人的にも国内の演奏会で、これ以上の《トリスタン》を体験したことはない。
トリスタン・イゾルデ2人の純粋な愛を中心テーマとしたオーソドックスな指揮/演出とも相まって、すばらしい演奏会であった。
飯守泰次郎の演奏はメリハリよく、緊張感あふれるもので、なによりオケが雄弁である。

前奏曲からズンズン引き込まれてしまった。会場の「ティアラこうとう」がそれほど大きなホール(1300人規模)でないのも幸いしたかな。舞台との距離感もなく――2階席の後方であったが――オケと歌手のバランスが崩れない。残響も少なめであり、響きがくっきりする。第1幕の舵手の声、水夫の合唱など、前面の歌手との遠近感が実に適切に浮かび上がる。

第3幕のイゾルデの船の到着を知らせるあたりもそうだ。
ここでは、舞台裏で、ホルツ・トランペットとやらが使われたようだ。
プログラムの解説によれば、この楽器はワーグナーがトリスタンのために音色をイメージしたとのこと。木製のトランペット。

歌手もそれぞれ頑張った。なかでもマルケ王(小鉄和広)は声量もたっぷりで一番の存在感があったのではないか。緑川まりは、先日の大野和士・都響のコンサートでは体調不良とのことで佐々木典子に代わったが、本公演に備えてのことだったのか。

舞台背景へのイメージ投射、どれもピンと来ない印象。やらずもがなではなかったか。
それと日本語字幕がいつもと違った様子。例えば第3幕では、しきりに"女医"とか頻出したのだが、違和感があった。

トリスタン:成田勝美
マルケ王:小鉄和広
イゾルデ:緑川まり
クルヴェナール:島村武男
メロート:青蜻f晴
ブランゲーネ:福原寿美枝 ※
羊飼い:近藤政伸
舵手:須藤慎吾
若い水夫の声:村上公太
構成小栗哲家
合唱:東京オペラシンガーズ
管弦楽:東京シティ・フィル
指揮:飯守泰次郎



■ グラインドボーンの《トリスタンとイゾルデ》 (2007.12.1)

NHK BSハイビジョン放送で、グラインドボーン音楽祭の《トリスタンとイゾルデ》を観た。2007.12.1(土) 22:00〜AM 2:15
《トリスタンとイゾルデ》は、つい先日、ベルリン国立歌劇場の公演でバレンボイム指揮の演奏に圧倒されたばかりである。(2007.10.14) → こちら

このグラインドボーン音楽祭の演奏も凝縮された密度の高い演奏だ。
それに、ハイビジョンの威力をまざまざと実感した4時間でもあった。

最後にカーテンコールまで収録されていたのでライブ録画とも思われるが、途中場面では、演奏会場の雑音などのようなものは感じられないので、ゲネプロを収録したものを編集したのだろうか。(録画収録:2007.7.28、8.1、8.6)

イゾルデのニナ・シュテンメが、いかにも北欧出身のソプラノらしく強く透明な声質ですばらしい。第1幕冒頭から、緊張感のあふれた歌唱で引き込まれてしまう。凛とした王女の風格があふれた演技も。
このビデオ収録はかなり心理的なカメラ・ワークではないか。音楽的な場面にぴったり追従している。シュテンメの細やかな心理的演技――とても観客席から分からないと思われる、を確実に伝えてくれる。
トリスタン、クルヴェナール、ブランゲーネなども充実している。それにマルケ王は、ベルリン国立歌劇場の公演でも浸透力のあるバスの歌唱に圧倒されたものだ。

演出はニコラウス・レーンホフ。大きな円形リングがいくつにも重なったような舞台。リングを通して別の世界を見通すような遠近感が強調される。特に第3幕などのイゾルデを待つ場面などでは効果的だ。
演技は終始、半月のような円弧状の不安定な床面で行われる。

管弦楽はロンドン・フィルハーモニー管弦楽団である。すばらしい演奏ではあったが、今ひとつ盛り上がりというかドラマチックさに欠ける。指揮者の責任だろうか。

このグラインドボーン音楽祭、来年2008年には、《ヘンゼルとグレーテル》を振って大野和士の登場が期待される。 → こちら

トリスタン:ロバート・ギャンビル
イゾルデ:ニナ・シュテンメ
マルケ王:ルネ・パーペ
クルヴェナール:ボー・スコウフス
メロート:スティーヴン・ガッド
ブランゲーネ:カタリナ・カルネウス

合唱:グラインドボーン合唱団
管弦楽:ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団
指 揮:イルジー・ビェロフラーヴェク
演出:ニコラウス・レーンホフ



■ ベルリン国立歌劇場公演 バレンボイムの真骨頂発揮 《トリスタンとイゾルデ》 (2007.10.8)



雨の降るなか神奈川県民ホールに出向いた。強い雨との予報であったが、幸いに小降りである。湿度がすごい。ホールにつくと汗びっしょりで、なかなか汗が退かない。ベルリン国立歌劇場の引っ越し公演。演目はワーグナーの《トリスタンとイゾルデ》
2006.10.8(月)

開演は午後3時、終演は9時前であったが、6時間の長丁場の公演であった。
チケット代にしても今回は張り込んだ。いつものコンサートとは大分差がある。20デシベルほどの違いがあるようだ。


今回の来日では、この横浜公演が最初である。ちょっとトラブルもあったようだ。第2幕では舞台の後ろから、何か悲鳴のような声が2回ほど聞こえたが、演出とは思われなかった。第3幕の幕開きでは、オケが既にチューニングが終わっているのに、指揮のバレンボイムがなかなか登場しない。かなりの時間がかかった(10分?)。何かあったのか。オケピットの配置は、第1Vnが指揮者の正面であったようだ。

全曲を通じて圧倒的な演奏であった。バレンボイムの指揮はさすがだ。媚薬を二人で飲むシーンとか、第3幕のイゾルデの「愛と死」など、ここぞという聞かせ所など抜群のバックアップである。オケがうねって聞こえる。オケの共感ぶりが伝わってくる。まさにオペラ劇場オケの持ち味であろう。
幕切れの「愛と死」はマイヤーの絶唱か。闇の中に沈んでいく、バレンボイムも、余韻を確かめながら、静かに指揮棒を置いた。思わず涙が流れました。

ベルリン国立歌劇場では、2002年に《ニーベルングの指環》公演を聞いた経験があるが。→ こちら
今回は、オケの圧倒的な充実ぶりにひどく感心した。バレンボイムの薫陶によるのか、音楽総監督(GMD)の力が大きいようだ。そう言えば、札幌では マーラーを聞いたことを思い出した → こちら

<主要キャスト>
トリスタン:クリスティアン・フランツ
イゾルデ:ワルトラウト・マイヤー ……メゾ・ソプラノ
マルケ王:ルネ・パペ
クルヴェナル:ロマン・トレケル
ブランゲーネ:ミシェル・デ・ヤング ……メゾ・ソプラノ
メロート:ライナー・ゴールドベルク
ベルリン・シュターツカペレ、ベルリン国立歌劇場合唱団

演出は、ハリー・クプファー。舞台には終始、崩れ落ちたor墜落した天使と思われる巨大像が中央に居座り、この翼の上で演技が展開される。この巨像は、ギリシャ神話の「イカロス」かな?と思うのだが。映画「猿の惑星」の幕切れシーンの「自由の女神」をも思わせる。道ならぬ恋をつらぬいた2人を暗示しているのだろうか。
この巨像はゆっくりと回転して時間の経過を示す。翼の上での演技と歌唱は、滑りそうで安定感がないので歌手もつらそうだ。

バレンボイムは暗譜で指揮を通したようだ。オペラグラスで譜面台をのぞくと、汗ふき用の白いハンカチしか見えなかった。
トリスタンはOKだ。第2幕など、センシティブは歌唱ぶり。3幕に向けて控えたのかな。
イゾルデ、今回はメゾ・ソプラノのマイヤーだ。さすがに気品がある。
同じメゾのブランゲーネと競合するので、楽劇としてのバランスは悪いかなと思うが、メゾであるが故に一段と人間的な印象である。ソプラノだと、超絶的な雰囲気が強くなるのではないか?
ブランゲーネも良いのだが、肉体的に堂々としすぎて、侍女の様子にマッチしない。

クーヴェナールは、ちょっと物足りない、くぐもったような声であり声量もいまいち。愚直ぶりが欲しい。
合唱が物足りない。出番は第1幕の水夫の合唱のみであったが
何と言っても、マルケ王が、抜群であった。声量もあるし、存在感、安定感がずば抜けていた。なにより説得力があった。カーテンコールではブラボーを呈しました。



■ ワーグナー 《トリスタンとイゾルデ》 青いサカナ団の熱演 (2005.6.18)




「国立オペラ・カンパニー 青いサカナ団」の主催する、ワーグナーの楽劇《トリスタンとイゾルデ》の公演に行ってきた。なかのZERO (もみじ山文化センター) は、JR中野駅 南口からちょっと歩く。大ホールは1,292席。入りはあまりよくありませんでした、2階席は50%ほどだったでしょうか。
2005.6.18 (土) なかのZERO大ホール


指揮:神田慶一
演出:粟國淳、美術:ベニート・レオノーリ

トリスタン;田代誠、イゾルデ;飯田みち代
マルケ;斉木健詞、ブランゲーネ;小畑朱実
青いサカナ管弦楽団、青いサカナ合唱団

「青いサカナ団」とは1989年に結成された、国立音楽大学の学生・卒業生を中心とする新しい世代を代表するオペラ団体とのこと。堅苦しいイメージをぬぐい去るために、あえて「青いサカナ団」というインパクトのあるネーミングだそうだ。ピカソの「青の時代」にも通じるらしい。もう創立15周年にもなるわけだ。団の主宰者 神田慶一は、国立音楽大学楽理科を卒業し渡欧して指揮者としての研鑽を積んだとのこと。

「青いサカナ団」のオペラ公演は 初めて経験。《トリスタンとイゾルデ》を演るとのことで、観るほうも おっかなびっくり。途中退場もありかな、とは思っていたのだが、意外なほどの健闘ぶりにびっくり。これほどのレベルの高さとは思わなかった。歌い手、オケ、指揮者ともども熱い共感が伝わって来ました。

本来であれば5時間ほどの大作を、パンフレットによれば、ワーグナー自身の初演時のカットを踏まえ、全3幕をそれぞれ1時間程度に整え、オーケストラの編成を50人規模の2管編成とし、ほぼ3時間に集約したとのこと。私には どこをカットしたのか 分かりませんでした。集約的な演奏ではなかったでしょうか。

イゾルデの飯田みち代さん。幕切れの「愛と死」まで 緊張感が維持されて感動的でした。コスチュームのわずかな変化も、イゾルデの心情を映して素敵でした。ブランゲーネの小畑朱実さんもよかったです。それとマルケ王の斉木健詞さん、とても声量のあるバスでしたね。

オケは指揮者の指示に一生懸命、応えている風の演奏でしたが、そのためにか思いもかけず効果的に舞台をバックアップしていました。第2幕、舞台上では熱烈な愛の二重唱が 続くのですが、木管群の響きがしみ通りました。もちろんワーグナー独特のオケの分厚い響きを満喫することにも、こまかい注文はあるにしても、不足はありませんでした。

今日のヒロイン飯田みち代さんがパンフレットに紹介されていましたが、ユニークな経歴にちょっとびっくり。これからの活動に注目したいと思いました。
愛知県名古屋市生まれ。2歳のとき筋無力症を患ったが奇跡的に回復。京都大学教育学部で教育心理学、臨床心理学を学んだとのこと。卒業後、企業に就職したものの、オペラを通じて世の中に夢や希望を与えたいとの思いから退職しオペラの道へ入ったとのこと。最近の活動としては、2003年《ルル》、2004年《エレクトラ》、2005年《魔笛》で夜の女王役。



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