■ 井上道義にやられた!《運命の力》 (2006.3.20)




 新国立劇場の《運命の力》 初日公演に行ってきた。2006.3.15(水)。

 指揮:井上道義、演出:エミリオ・サージ
 合唱:新国立劇場合唱団、管弦楽:東京交響楽団

 ヴェルディの《運命の力》 序曲は傑作だ。個人的な思い入れでは、三大オペラ序曲の一つである。ほかは、《セビリアの理髪師と》《フィガロの結婚》。 CDではトスカニーニの強烈な沸き立つような演奏が忘れられない。


序曲が響いた途端に当夜の演奏は素晴らしいものになるな、と直感した。井上ミッチーの確信にみちた指揮ぶりである。冒頭のフォルテに続いて、思い切りゆったり、たっぷりとオーボエを歌わせる。そして煽り立てるような弦なんか。指揮者が、いかにも観客に挑むような姿勢を感じる。観客を舞台にぐいぐいと引きずり込む。

ポスターカラーで描いた書き割りのように、メリハリの効いた演奏。紙芝居をめくるように、この暗いテーマのオペラを楽しめた。オケの東響も十分に実力を発揮している。
……ピットに入っているのは東フィルと誤解していた。いつもと違って、今日はなかなか頑張っているね、と思ってプログラムを確認したら、東響ではないか。
オケは終始、緊張感に満ちた演奏。改めて東響を見直しました。

ヴェルディ中期のオペラとのことで、随所にアリアが挟みこまれていて、拍手の余裕も十分ある。第3幕だったか、アルヴァーロとドン・カルロの二重唱など、《オテロ》を思い出させるような、男声二重唱の醍醐味を満喫できた。
アルヴァーロのロバート・スミスが、澄み切ったテノールで力強い声量。本日の一番押し。
レオノーラのアンナ・シャファジンスカヤ、ドラマチックな演技・歌が素晴らしかった。
ドン・カルロのクリストファー・ロバートソンも風格があり良いのだが、ちょっと発声にひっかかる。日本人歌手では意外と、フラ・メリトーネ役の晴雅彦が良かったのではないか。滑稽味た出そうとした演技はすべっていましたね。

初日ということで、舞台転換などでスムーズさに欠けるところがあったのはしょうがない。
しかし、演出には共感するところが少なかった。第1幕など、舞台にサイコロのような居室が設定されているのだが、なぜその中で1,2階を往復してアリアを歌うのか、必然性を感じられない。群衆の動きもどうか。これだけの重厚なオペラではないかマッチしていない。幕切れの場面では、雪がちらちらと降ってきたようだが、まったく興ざめであった。

<配役>
レオノーラ:アンナ・シャファジンスカヤ、ドン・アルヴァーロ:ロバート・D・スミス
ドン・カルロ:クリストファー・ロバートソン、プレツィオジッラ:坂本朱
グァルディアーノ神父:ユルキ・コルホーネン、フラ・メリトーネ:晴雅彦
カラトラーヴァ侯爵:妻屋秀和


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