■ サンティ指揮 N響 ヴェルディ:《シモン・ボッカネグラ》 (演奏会形式)  (2013.11.10) 

第1766回 定期公演Aプログラム 2013年11月10(日) NHKホール

《シモン・ボッカネグラ》の実演に接するのは初体験。NHKホールの巨大空間の片隅で3階席からの鑑賞。サンティの指揮もさることながら、N響の特質がこのシンフォニックなオペラにぴったりマッチしていた。

サンティは1931年生まれとのことだから、今年は82歳か。歩く姿に年齢を感じさせる。何気ない指揮ぶりだが、暗譜だぞといった気張りも感じない。まったくの自然体で、歌手オケに的確な指示を送っている。ヴェテランの技を感じさせる。


プロローグに先立つ序曲の繊細な響きはジェノヴァの海を表わすのだろうか。冒頭から引きつけられる。今回のオペラ公演でオケの演奏は、ダイナミックレンジの大きなものであった――それもピアニシモの方に広がったものだ。序曲からすでに、サンティはN響から繊細なピアニシモを引き出した。

シンフォニックな響きも続出。時にぞくぞくするようなオケの金管群の咆哮もあった。スケールが大きい。今回は改訂版の上演とのことだ。ヴェルディは、《オテロ》に先立つ6年前に、主にオケの部分を書き直したそうだ。ワーグナーの影響もあったのかな。

一方、第1幕のシモンとアメーリアの親子再開シーンのように、しっとりと情感たっぷり。プロローグでのシモンの登場ぶりでの音楽がすごい。おもいっきりクマどりをつけた、これぞヴェルディか。あの黒澤映画での悪役の登場場面を思い起こさせる。サンティの冴えた指揮ぶり。

シモンのパオロ・ルメッツ(バリトン)は素晴らしい歌唱だったと思います。ガブリエレのサンドロ・パーク(テノール、韓国出身)は、えらく声がでかい。一人だけスタイルが違うなと感じたのだが。


<キャスト>
指揮:ネルロ・サンティ

シモン:パオロ・ルメッツ
マリア/アメーリア:アドリアーナ・マルフィージ
フィエスコ:グレゴル・ルジツキ
ガブリエレ:サンドロ・パーク

合唱:二期会合唱団
NHK交響楽団 コンサートマスター:篠崎史紀


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