■ ワーグナー:楽劇《ワルキューレ》 (2013.9.14)

神奈川県民ホールにて 2013.9.14(土)



伺ったのは日本人キャスト中心の第1日(9/14)の公演。スケールの大きな歌手はいないものの、コンパクトな親密感をいだかせる公演だったのではないか。なにより指揮者の沼尻竜典さんが素晴らしかった。きっちりとした音楽を引き出し、聞かせてくれました。


ワーグナーの楽劇、それも5時間にもなろうという長丁場、オーケストラの健闘ぶりにも拍手をおくりたい。ワーグナーのダイナミック・レンジの広い音楽、さらに《ワルキューレ》では精妙かつ抒情的な場面もたっぷり。オケにとってはかなり挑戦しがいのある音楽だと思います。聴き応えのあるオケでした。さすがに最終幕ではわずかに疲労がでたのかなと、ちょっと音程不安とかを感じる場面がありましたが。

沼尻竜典さんは獅子奮迅の活躍。座席が3L側だったので、的確な指揮ぶりを手に取るように見ることができました。本日の公演に大きなリーダーシップを発揮したのは明らかです。

演出面にはかなりストレスを感じましたね。場面転換がかなり細かく考えられているようですが、その度に幕の上げ下ろしがあるのは煩わしいもの。折角の緊張感が分断されてしまう。音楽が滔々と流れているのに、舞台は場面がせわしく切り替わるとは!

実は前日、公開リハーサルを見たのですが、その時は、リハーサルなので、幕の動きを確認しているのかな思いました。あれは本番そのものだったのですね!スクリーンに映し出されるのはト書きだったのか?

とくに楽劇の幕切れ、ウォータンの別れの場面。何度も舞台が切り替わるのだが、必然的な理由が伝わってこない。単純に、ウォータンの回想場面が挿入されたのかなと思ったのだが。どうも演出のコンセプトが「家族物語」ということらしい。そういえば、幕開きから舞台を枠どっているのは、宮殿とか豪華住宅のイメージですね。ウォータン一家の住み家を現しているのか。あらゆる場面でフリッカが姿を現すのは、「当家を仕切っているのは私よ」とのメッセージだろう。

楽劇自身を矮小化するような演出でしっくりは来ませんでした。ついでに言えば、第3幕の冒頭「ワルキューレの騎行」の場面。ワルキューレ達の戦士の扱いは趣味が悪い。

ジークムントの福井敬さん、ヴォータンの青山貴さん、良かったですね。フリッカはもう少しアクの強い演技であれば演出意図にっぴったりだったと思います。

<キャスト 9/14>
指揮:沼尻竜典
演出・装置:ジョエル・ローウェルス
管弦楽:神奈川フィルハーモニー・日本センチュリー交響楽団

ジークムント:福井敬、フンディング:斉木健詞、ヴォータン:青山貴
ジークリンデ:大村博美、ブリュンヒルデ:横山恵子
フリッカ:小山由美


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