■ 『自信過剰』 できない脳ほど……  (2021.4.28)


脳科学者・池谷裕二さんの本はこれまでかなり読んでいる。いつも脳に関する興味深いテーマや知見が紹介されている。
当サイトの「読書ノート」で今まで取り上げた本/テーマを以下に掲げよう。

◆『海馬 脳は疲れない』 ⇒こちら

◆『記憶力を強くする 最新脳科学が語る記憶のしくみと鍛え方 』 ⇒こちら

◆『進化しすぎた脳 中高生と語る[大脳生理学]の最前線』 ⇒こちら

◆『脳はなにかと言い訳する』 ⇒こちら

◆『パパは脳研究者 子どもを育てる脳科学』 ⇒こちら




今回 読んだのは朝日文庫の新刊『できない脳 自信過剰』である。


なかで興味をもったのは「失敗するほうが脳は学ぶ」というテーマ。
「サイエンス」誌に発表されたジョンズ・ホプキンス大学のハーツフェルド博士らの研究を紹介している。
脳は成功体験よりも、失敗体験からよく学習するという。


例えば、手を伸ばして目の前のコップをつかむのはやさしいこと。しかし、視野が10センチ右にシフトする特殊メガネを掛けると、手は右にずれてしまう。
ところが、脳は見事に手を伸ばしつつ軌道を修正して、遠回りしながらも正しくコップをつかむ。エラーを随時修復するのだ。

この訓練を繰り返すと,メガネを掛けたままでも、最短経路で遠回りせずに手を伸ばしてコップをつかめるようになる。
右にシフトした世界観に慣れ、意識することなく自然な動作ができる。
ハーツフェルド博士らは「脳は今回の失敗を過去の失敗経験に照らして上手に認識することで上達する」と結論しています。

「プロとはその道のあらゆる失敗を知っていることだ」との言葉があるそうだ。
エジソンは「私は一度も失敗したことがない。単に何万通りものうまく行かない方法を発見しただけだ」と言っている。


◆ 『できない脳ほど 自信過剰』 池谷裕二、朝日文庫、2021/3

◆ 池谷裕二(いけがや ゆうじ):1970年静岡県生まれ。薬学博士、東京大学薬学部教授。2013年、日本学士院学術奨励賞を受賞

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