■ 『アマゾン・ドット・コム』 ユーザサービスの充実に力を入れた (2002.7.14)



既にネットバブルは崩壊。アマゾンの株も一時に比べれば、下落している。しかし、出版は2年前だが、この本を読む価値はある。巻末の山形浩生の解説「アマゾン・コムから学ぶべきこと」から読むのも良いだろう。また、著者が最後に、物理的店舗と仮想店舗を組み合わせた「クリック・モルタル造り」の小売業者が、真の勝者になると考えている、というのは示唆的である。

ジェフ・ペゾス
が、2人の技術者――シェル・カファン、ポール・バートン-デービスと共にアマゾン・ドット・コムの立ち上げ作業を開始したのは1994年11月。既に1993年にはWWWが誕生し、企業がサイトを整備し始め、年次報告書、製品の資料や技術仕様、プレスリリース、各支店とその電話番号といった静的な情報を掲示していた。アマゾンのオープンは95年7月16日。その直後から急成長が始まった。

なぜ書籍をターゲットにしたのか
・書籍は、すべての言語を合わせると世界中で流通・出版されている品目は300万点を超えている
・書籍業界は規模は大きいが細分化されているため、強力な権力者に支配されているようなこともなかった。バーンズ&ノーブルとボーダーズ・グループという二大書店チェーンの売り上げを合わせても、1994年の一般消費者向け書籍全売上高約300億ドルのうちの25%にも及ばなかった。

ペゾスは「これだけ膨大で多様な商品があれば、これまでどんな形態でも存在しなかったような店をオンラインで造ることができる。あらゆる種類の在庫をそろえた真の意味のスーパーストアを構築できるはず」と考えた。

・オンライン書店で消費者が利用できる点数には、実質的な制限はない。そしてWWWの検索・抽出インターフェース技術によって、顧客は、出版書籍すべてを網羅したデータベースに簡単にアクセスできる。あらすじや抜粋、書評など役立つ情報を多く提供すれば、顧客が購入するかどうかを決めるのも簡単になる。

・物理的な大型書店よりもずっと無駄を省いた経営ができる。顧客ごとの好みや買い物の傾向に関する情報を収集することもでき、それを利用してダイレクト・マーケティングや顧客に応じたサービスの可能性も生み出すこともできる。

ペゾスが最も力を入れたのはユーザサービスの充実。例えば、アマゾンは注文を受けてから数分後に確認の電子メールを送っている。オンライン会社でこれを行ったのは、アマゾンが最初と言われている。返品も自由にできる方式。質問や苦情にもすぐに答えてくれる体制。さらに、書評スタッフの充実。別のウェブページからリンクを張っておけば、それをたどって買い物をした人がいればそのキックバックがもらえるアソシエイト制度。解説の山形浩生によれば、ほんのちょっとしたアイデアではあるけれど、それが見事に機能しているし、それをいちはやく取り入れることで、固定ユーザを確実に作りだしていると。


◆ 『アマゾン・ドット・コム』 ロバート・スペクター著、長谷川真実訳、日経BP、2000/7


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