■ パソコンとプロ野球――アソボウズの先進性 ( 2000.5.27)




「パソコン」と「プロ野球」。お互いに違和感を与えるキーワードではない。しかし「アソボウズ」とは初耳である。1995年の日本シリーズはヤクルトとオリックスとの決戦となった。この年、イチローは打率.342で2年連続の首位打者を獲得した。このイチローを完璧に押さえ込んだのがアソボウズのデータだったのである。

野村克也 (現・阪神監督)は言う、いいデータの条件は<集める、分析する、提示する>。正確な情報、的確な分析、単純化したプレゼンテーション。この3つが全てそろってこそ、初めて選手が使える武器としての<データ>が出来上がる。野村監督-古田捕手のコンビはアソボウズの提供したデータを基に、これを実践し4勝1敗でシリーズを制したのである。

アソボウズには2つのシステムがある。ひとつは、「動作解析システム」。パソコン上でビデオ画像を制御し、2分割画面に映し出す。たとえば好調時とスランプ時のフォームを比較することができる。工藤公康(現・巨人)は自宅に動画解析システムを揃え、自ら積極的にフォームのチェックを行っているほど。今年の活躍もむべなるかなである。サッカーのフォーメーションの分析にも有効ではないか。

もう一つは、「スコアメーカー」。 野球のスコアブックをパソコンで入力し、多角的な分析用データを瞬時にディスプレーに表示する。希望の条件を入力すれば、様々なデータを集積、解析して表示することができる。いまではアソボウズの動作解析システムとスコアメーカーが10球団で採用されている。

アソボウズの原点は、スコアメーカの開発。元ロッテのバレンタイン監督に試しに使ってもらって成果をあげた。近鉄投手陣の配球パターンは、たとえばある投手は、1-2のカウントから7割の確率でフォークボールを投げてくる。そのデータをもとにバレンタイン監督は2度にわたってヒットエンドランを敢行し成功させた。

著者の片山宗臣さんは、開発者でありアソボウズの代表。本来なら歌舞伎のカツラ職人として、父の仕事を引き継いでいるはずだった。ゴルフが好きで、どうしたらうまくなるか、理想のフォーム作りのために考え抜いた。自分のスイングとプロのスイングを一つの画面で並べて見比べたらどうだろう、という発想が生まれた。これが「動作解析システム」へ成長したのである。

データを駆使した野球の面白さ。さらに現場に使ってもらって改善を繰り返し、システムの先進性を維持すること。著者の情熱が伝わってくる。


◆『パソコンが野球を変える!』片山宗臣著、講談社現代新書、2000/4


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