■ ブラームス交響曲第2番、第4番 (2000.8.28)

2000年8月27日(日) 鎌倉芸術館にて、大野和士指揮 東京フィルハーモニーの演奏でブラームスの交響曲第2番、第4番を聞いた。

ブラームスの交響曲で1夜のプログラムを組むとしたら、これ以上の組合せはありませんね。陽光から夕闇へ、田園から廃墟へ、希望から諦めへ、そして長調から短調へとベクトルは反転する。第2番はブラームス44歳ときの作曲、一方第4番は52歳である。わずか8年の差。ブラームスの没年は64歳であるから、最後の交響曲とはいえまだまだ壮年期の力強さは残っている。しかしブラームス独特の枯淡の味が色濃い。

大野和士はこの後、年末12月にマーラーの交響曲第9番を予定している。ミレニアムの締めくくり。次は必然的にショスタコーヴィチの第15番を期待したいものだ。ブラームス第2番の圧倒的なフィナーレの後、休憩をおいて、第4番がスタートする。オーケストレーションも一段と繊細になる。ショスタコーヴィチも同じ道をたどっているのではないか。もちろんより現代的で深層的であるが。

第2番から第4番へと、ベクトルの移り変わりを楽しみました。第2番ののびのびとした開始にすっかり魅せられました。弱奏のホルンはコントロールが難しそう、緊張しましたが今回はOK。時に聞こえるブラームス得意の民謡風なメロディーに懐かしさを感じます。最終楽章は金管の鳴り響くエネルギーの爆発。

第4番は、例によって、ため息のような始まり。中間で歌謡的なメロディーが出てくる。第2楽章、ホルンが好調だ。第3楽章、スケルツォ?躍動的な大野の指揮がマッチする。トライアングルが活躍。

東フィルも熱演であった。しかし、あの熱の入ったフィナーレのあと、観客席を向いたオーケストラのメンバーが一様に能面なような冷静な表情なのはなぜ?我々はプロ集団だということだろうか。素直に音楽の喜びを聴衆と一緒に共有して欲しいと思ったのだが。これは私だけの思い過ごしだろうか。

それにしても大野の指揮ぶりがこれから日本で見られないのは残念。この鎌倉芸術館シリーズは来年も継続して欲しいものだ。



◆交響曲第2番 ニ長調(op.73) 難産の第1番の翌年に作曲。第1楽章 アレグロ・ノン・トロッポ。ゆったりとしたホルンの開始。田園的雰囲気。第2楽章 アダージョ・ノン・トロッポ。心情的楽章。第3楽章 アレグレット・グラツィオーソ・アンダンティーノ。Vnのピチカト。第4楽章 アレグロ・コン・スピリト。静かに始まるのだが、突然のアタック。金管の鳴り渡るフィナーレ。

◆交響曲第4番 ホ短調(op.98) 寂寥感が漂う。最晩年ではないが人生の秋の予感。第1楽章 アレグロ・ノン・トロッポ。ヴァイオリンのため息。第2楽章 アンダンテ・モデラート。ホルンで始まる。第3楽章 アレグロ・ジョコーソ(陽気なアレグロ)。スケルツォ風、思い切りのよい決断。第4楽章 アレグロ・エネルジーコ・エ・パッショナート(情熱的なアレグロ)。パッサカリア変奏曲。回想的な雰囲気、力強いフィナーレ。



戻る