■ サン=サーンスのクラリネット・ソナタ (2002.11.17)


輸入CD店のワゴン・セールで、アシュケナージの名にひかれて何気なく手に入れたCDの1枚。なかではサン=サーンスのクラリネット・ソナタが気に入った。16分ほどの心にしみ入る小曲。サン=サーンスにこんな佳曲があるとは知らなかった。CDのタイトルは「French music for xlarinet and piano」 (pan CLASSICS 510 059)、ほかにプーランク、ドビュッシーなど。

このクラリネット・ソナタ (Op.167)は、サン=サーンス86歳、最晩年の作曲。実は85歳の時に休筆宣言をしていたそうだが、この年は他にオーボエ・ソナタ(Op.166)と、ファゴット(バスーン)・ソナタ(Op.168)も作曲している。クラリネット・ソナタはパリ音楽院のクラリネットの教授に捧げられている。

全体は4楽章の構成。第1楽章 (Allegretto); 冒頭のテーマが印象深い。抒情的とも言えるが、さすがに晩年の作曲だけにしっとりとした枯淡の味がにじむ。いかにもクラリネットの響きにマッチしたテーマ。変奏が繰り返される。いわゆるソナタ形式か。静かに消え入るように終わる。第2楽章 (Allegro animato); 活発だが、やや回想的な響きがある。かつての青春の日々を思い出す雰囲気。

第3楽章 (Lento) ;ピアノの重々しい和音から始まる。クラリネットが重なり、リズムが沈み重々しい。憂鬱な雰囲気。クラリネット、ピアノともに弱々しく終わる。第4楽章 (Molto Allegro) ;クラリネットが華麗な響き。かすかに第1楽章のテーマが聞こえる。きらめきながら、ゆっくりと沈潜する。最後に第1楽章のテーマがゆっくりと繰り返えす。

クラリネットがディミトリ・アシュケナージ (Dimitri Ashkenazy)。1969年ニューヨークの生まれ。あの名ピアニスト、ヴラディーミル・アシュケナージの息子の一人である。ピアノはイヴォンヌ・ラング (Yvonne Lang)。1971年ルツェルン生まれ。演奏は、オーソドックスなもの。サン=サーンス最後の曲だからという思い入れもない。


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