■ 本とインターネット (2000.2.10)


「有隣」という小冊子をご存じですか。2月号(第387号)の座談会のテーマは「本とインターネット」。興味深い内容でした、紹介しましょう。

「有隣」は横浜の大型書店・有隣堂のPR誌。タブロイド版6ページ、月1回の発行。広告臭も少なく毎回読み応えがあります。ちなみに1月号の座談会は「ことばと文化」がテーマ、慶応大学名誉教授 鈴木孝夫さんが出席しています。

2月号の座談会は、慶応大学教授 上田修一さん、「本とコンピュータ」編集長 津野海太郎さん、作家 松本侑子さんで司会は有隣堂会長の篠崎孝子さん。
出席者の人選に、見識を感じました。津野さんは、文字通り"本とコンピュータ"に一家言あるのは衆知のこと。最近オンデマンド出版の実験を始めたばかりですね。松本さんは、作家のなかで最も先端的にパソコンを活用しているのではないでしょうか。上田教授は慶応大学で図書館・情報学科を担当。

3ページほどの内容ですが、本・インターネットへの熱意が凝縮されています。本文はじっくり読んでもらうとして、とりあえず表題だけを拾ってみましょう。

・資料検索・取材・執筆にパソコンを活用
・百科事典はインターネットと連動させ、データを補充
・紙では失われてしまう本を甦らせる電子図書館
・少量印刷印刷・少量出版のためのオンデマンド出版
・書店は本と検索のプロフェッショナルになってほしい

◆松本さんのパワフルなパソコン活用法に感心しました
デビュー以来、すべて小説はキーボードで書いてきて、ペンでは思考のスピードに追いつかないとのこと。また、モバイル・パソコンに、百科事典や英語辞典、国語辞典も入れて、どこに行っても仕事ができる環境を作っている。『赤毛のアン』では、引用されている19世紀の文学作品を英米の図書館に行きコピーしてきた。それを全部スキャナーで読み取ってOCRソフトでテキスト化して電子図書館を作ったそうです。

◆本と書店の将来は
パソコンで電子本を読む仕組みもだいぶ改良されている。ホームページなどで読みなれてきたこともあるようだ。縦書きとか、活字の大きさとか読みやすさを追究した、ブラウザに取り込めるツールも開発されています。

紙の本はなくならない、電子化されたものと共存していくというのが共通の結論です。インターネットの世界はこれからもどんどん進展する、思いもつかないサービスが提供されるようになるだろう。書店は一層プロフェッショナルとして期待される。
例えば、津野さんは、大きな書店のデータベースで調べて、注文は自分の土地の小さな本屋さんから、という可能性もあると言う。

◆「有隣」 (特集 本とインターネット) 2000年2月号(第387号)


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