■ 大野和士/モネ劇場オケ マーラー 《復活》 (2003.4.6)

「私の中でマーラーという作曲家は分水嶺のような存在だった」と大野和士は言う。「マーラーを中心として、その中にある古典的な部分からモーツァルトへ、あるいはロマンティックな部分からシューマンやブラームスに還ったり、逆にモダンな部分からは現代の音楽へと想いを馳せたり……」。前任地カールスルーエでの最後のコンサートも《復活》であった。

この《復活》は終楽章に向けて非常によく考えられた、丁寧な演奏であるという印象が強い。比較的ゆったりしたテンポが全体を一貫し、決して感傷的ではないが、マーラーへの共感を感じる。特に冒頭の第1、第2楽章がそうだ。モネ劇場のオーケストラは感度が良さそう。大野の棒によく反応している。今後のCD録音に期待をもたせる。

第1楽章。冒頭のものものしい低音弦によるテーマもグロテスクでない。マーラー自身がこの楽章を<葬送>と呼んでいるとのことだが、大野の演奏には、そのかけらはみじんも無い。むしろ、懐かしさと言いたいほどのマーラーへの共感があふれている。中間部のVnソロでは、さらにテンポを落とす。確信をもった演奏である。

第2楽章。ゆったりと歌う。大野がリーフレットで言うとおり、感傷に陥る一歩手前で踏みとどまっている。弦合奏にも、ポルタメントがかかっているのではないか。第3楽章のスケルツォへとつながる。

第4楽章。アルトの独唱が入る。誠実な演奏だ。オーボエのバックアップが好ましい。第5楽章は、一転して強烈な崩壊的な音響で開始する。遠くから、ホルンが響く。舞台裏のオケが効果的である。合唱が響き、壮大なフィナーレへと終結する。

録音は良い。ときに室内楽的な響きがあり、スケール感が今一歩欲しいときもあったが。冒頭の楽章では、低音群がアップすると、チェロだろうか鼻息がちょっと耳につきますね。バランスがやや低音に片寄るのはホールのせいでしょうか。

◆マーラー:交響曲第2番 ハ短調《復活》(WPCS11561/2)
大野和士指揮、ベルギー王立歌劇場管弦楽団、合唱団
スーザン・シルコット(S)、ヴィオレータ・ウルマーナ(A)
録音2002年9月27日、29日、10月1日、8日 パラ・デ・ボザール、ブリュッセル、ライブ録音



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