■ 『ロジカル・シンキング 論理的な思考と構成のスキル』 マッキンゼー社のノウハウとは何か (2001.12.11)

本書のテーマは、「論理的なメッセージを伝えることによって、相手を説得して、自分の思うような反応を相手から引き出すこと」とある。そのためには4つの技術が必要だとする。まず、論理的に思考を整理する技術で、(1)MECEと(2)So What?/Why so? 次に、論理的に構成する技術の基本として、(3)並列型、(4)解説型がある。

特別に新しい技術とは思えなかったのだが、要はトレーニングを繰り返すことでしょうか。So What?/Why so?と英語で繰り返されても、いまいちピンとこないのであった。情報をMECEの切り口で整理するグルーピングの技術は、かつての「KJ法」そのものですね。また、論理パターンの基本には、「並列型」と「解説型」があると。この2つのタイプの違いがどうもよく分かりませんでした。

メッセージは、「課題」(テーマ)が明快であること、「答え」があること、そして「相手に期待する反応」が明らかであること、が要件である。常にこのメッセージの定義に戻り、(1)課題(テーマ)を確認する、(2)相手に期待する反応を確認することが大切である。相手に何らかのアクションをとってもらうことが最終目的であるはずだ。伝えることは手段であり目的ではない。

相手に自分のメッセージ(結論)が通じないとき、結論は「課題の答えの要約」であって、「自分の言いたいことの要約」になってはいないだろうか。修飾語が多くないか。修飾語で物事が具体的になることはない。具体的に方法を書ける、話せる、ということは、すなわち問題が解けているということだ。そして、説得力のない「答え」に共通する欠陥として、(1)話の明らかな重複・漏れ・ずれ、(2)話しの飛び、がある。

重複・漏れ・ずれを防ぐためには、MECE (ミッシー)という技術がある。ある事柄や概念を、重なりなく、しかも全体として漏れのない部分の集まりで捉えること。Mutually Exclusive and Collectively Exhaustive。ひとつの課題や概念を全体集合として、それを大きな漏れや重なり、ずれがない部分集合に分けて考えること。

MECEには、(1)完全に要素分解できるタイプ。例えば、年齢や性別など。(2)約束事になっているもの。これを押さえておけば、大きな重複・漏れはない、というもの。例えば、マーケティングの4P 商品(Product)、価格(Price)、チャネル(Place)、訴求方法(Promotion)がある。

話の飛びをなくす技術には、So What?/Why So? がある。So What? とは、手持ちの情報や材料の中から「結局どういうことなのか?」を抽出する作業。「よって」「したがって」「このように」の前に述べた情報やネタの中から、自分が答えるべき課題に照らしたときに言える重要なエキスを抽出する作業のこと。

Why So? は、「なぜそのようなことが言えるのか?」「具体的にはどういうことか?」と検証・確認することである。大切なのは日頃の習慣だという。「要するにここから何が言えるのだろ」「要するに、この話で大事なことは何だろう」と考える癖をつけるしかないと。

論理的に構成する技術は、 So What?/Why So?とMECEで「論理」を作ることである。論理とは、結論と根拠という複数の要素が、結論を頂点に、縦方向にはSo What?/Why So?の関係で層をなし、また横方向にはMECEに関係づけられたものである。


◆『ロジカル・シンキング』 照屋華子/岡田恵子著、東洋経済新報社、2001/5

◆照屋華子 (てるや・はなこ) 東京大学文学部社会学科卒業。伊勢丹業務部広報担当を経て、1991年 マッキンゼーにコミュニケーション・スペシャリストとして入社。現在、同社と嘱託契約にて、顧客企業へのコンサルティング・レポートや提案書、記事等、さまざまなビジネス・ドキュメントを対象に、論理構成と日本語表現の観点からアドバイスを提供するエディティング・サービスに従事。
◆岡田恵子(おかだ・けいこ) 慶應義塾大学法学部法律学科卒業。日本交通公社出版事業局を経て、1989年、マッキンゼーに入社。コミュニケーション・スペシャリストとして、顧客企業向けコンサルティング・レポートの論理構成や表現に関するエディティング・サービスやコミュニケーション戦略の立案・実施支援に従事。


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