■ 『ONとOFF』 変革へのメッセージ (2002.6.22)

本書は、ソニーの社内向けホームページに掲載された出井伸之 会長兼CEOのメッセージをもとに構成されたもの。ビジネスの世界(ON)での発言と、私的な趣味の世界(OFF)の2部に分かれる。日記でもあり、戦略メモ帳だとも。「変革へのメッセージ」をいかに伝えるかに腐心したという。

もっとも数多く出現するキーワードは、「変革」と「スピード」。そして、強い危機意識が底流にある。海外出張から帰ったときのメッセージ。「どの会社もソニーより時代の変革に対する認識が高く、危機感も強い。変革への取り組みが真剣で、スピードがある」。(2000.3.15)

インターネットはビジネス界に墜ちた隕石だという(2000.6.5)。6500万年前に地球に墜ちた隕石が恐竜を絶滅に追いやったのと同じように、インターネットは、PCメーカーや通信業界のみに限らず、音楽、映画、金融、医療など全ての分野に影響を及ぼす。既存のビジネスのやり方に固執している「恐竜」は滅びてしまうのだ。

ゴルフのレッスンにしても、欠点を解消するために戦略的アプローチをしている。「改革のための8つのステップ」があるという。(ハーバード・ビジネススクールのコッター教授の論文からのヒントらしいが)

@危機意識の確立 A強力なガイドチームの形成
Bビジョンの創造、Cビジョンの伝達 Dビジョンに向かって行動するように全社員を奨励
E短期的成果の計画と実行 F更なる改革の推進
G新しいアプローチの制度化



◆『ONとOFF』出井伸之著、新潮社、2002/4
◆出井伸之 (いでい・のぶゆき) 1937年東京生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。60年ソニー入社。95年4月、大賀典雄氏のあとを承け社長に就任。現在会長兼CEO。


■『気骨』 マイクロソフトを悩ませたチャイニーズ・ウーマン (2002.6.22)

いまワールドカップのスペイン:韓国戦が終わったばかり。120分の死闘を経てPK戦で決着。韓国が準決勝に進んだ。「果敢に攻め抜く」という姿勢、これに強く印象づけられた。

本書が、スーパーウーマンの自伝であることは明らか。中国女性の立志伝。14年間に及んだ2つの帝国、IBMとマイクロソフト、での体験をまとめている。女性のハンディを乗り越えたこと。外国人マネジャーとの確執など。IBMの派遣事務員から始まって、正規の社員へと自らの力で切り開く。そして中国IBMのトップへ、マイクロソフト中国支社のゼネラルマネージャへの転身。ここにも攻め抜く姿勢がある。

バックボーンとなっているのが「気骨」か。事業に対する志があると言いきる。「私の根は中国にあり、気にかけるのは短期的にも長期的にも中国でのマイクロソフトの利益である」と。

IBM、マイクロソフトの両社の人材の管理体制に鋭い眼が向けられる。二つの会社には文化のとも言える違いがあるという。マイクロソフトは良い社員の特質に、ある結論を出していると。

・製品、技術に強い興味を持ち、宣教師並の敬虔さと情熱がある。
・会社の長期的な目標と自身の考え方が一致していて、絶えず自分自身を改善する。
・特別な知識と技能を持ち、速習できる能力がある。
・競争相手に注意を払い、賢いやり方を見習って同じ間違いをしない
・考えたことが実行できる。速く決断を下せる。



◆『気骨 マイクロソフトを悩ませたチャイニーズ・ウーマン』 呉士宏(ウー・シーホン)[著]、張東君[訳]、日経BP社、2002/2


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