■ パトリス・シェローの訃報 ――朝日新聞から (2013.10.9)

パトリス・シェローさん死去 仏の演出家・映画監督。AFP通信によると、パトリス・シェローさん(フランスの演出家、映画監督)が7日、死去、68歳。
1976年、独バイロイト音楽祭で楽劇「ニーベルングの指環」を演出。大胆に背景を読み替えた現代的な演出を提示し、その後のオペラ演出のあり方に大きな影響を与えた。映画監督としても、00年の「インティマシー/親密」でベルリン国際映画祭金熊賞を受けた。ほかに「王妃マルゴ」(94年)、「ソン・フレール―兄との約束―」(03年)などがある。俳優としても活動した。(朝日新聞2013.10.9)



■ パトリス・シェローの《指環》 (2001.2.23)

朝日新聞によれば、ベルリン映画祭の金熊賞はシェロー監督が獲得したとのこと。
バイロイトの《指環》で激しい賛否両論を引き起こしたあのパトリス・シェローか?もう一度よく記事を読むと。

ベルリン映画祭金熊賞にシェロー監督「インティマシー」。第51回ベルリン国際映画祭は18日、コンペティション部門の最高賞である金熊賞にフランス人監督パトリス・シェローの「インティマシー」を選んだ。日本の「狗神」(原田眞人監督)と「クロエ」(利重剛監督)は賞に届かなかった。(2001年2月20日 朝日新聞・朝刊)。

「インティマシー」は冒頭からセックス・シーンが延々と続くそうだが、テーマは何なのだろう。題名からして意味不明である。

◆1976年のバイロイト祝祭で上演され、論議をまきおこした《指環》の演出

演劇畑出身の演出家でフランス人のパトリス・シェローは、舞台装置担当のリシャール・ベドゥツィおよび衣装担当のジャック・シュミットの2人とともに、バイロイト祝祭百周年を飾る《指環》の新演出を手がけ、ワーグナー作品の上演にさらなる里程標を打ち建てた。映画を思わせる写実的な演技、劇的動機づけを際だたせるためにテクストの深層を探る方法、時代考証をあえて無視して、1850年代から1970年代にいたるあらゆる時代の要素をごった煮的に詰め込んだ装置、大道具、衣装――以上はすべて、リヨンおよびパリの国民劇場におけるシェロー演出ですでに先駆的に試みられていたことである。

この演出が指し示した2つの方向――視覚的な美にあふれた新ロマン主義的な舞台への回帰と現代的問題を作品解釈に反省させる手法――はどちらも、世界中のいたるところで推し進められている。


上の文章は、『ワーグナーの上演空間』から抜き出したもの。既に映画的手法を存分に取り込んでいたのだ。シェロー/ブーレーズのコンビによる《指環》は過去にNHK-BSで放送され、またLDでも話題をさらった。いま改めてじっくり見たいものだ。DVD化の計画があるのだろうか。


『ワーグナーの上演空間』は読み応えのある面白い本だ。ワーグナーの演奏の周辺――空間を歴史的、網羅的に俯瞰しようとの意図があるのだろう。また指揮者、歌い手、演出者。過去の巨人伝説を読むのも楽しい。トスカニーニ、フラグスタート等々。バイロイトの舞台構造やオーケストラ配置などの図も興味あるもの。メトロポリタンで活躍した指揮者、アントン・ザイドル (Anton Seidl)について1章が割かれているが、誰だろう、まったく分からない。ドボルザークの《新世界》の初演は彼だったか。


この本は過日阿佐ヶ谷で古本ハンティングした折りに手に入れた。入る店入る店にこの本が置いてあったのである。かねてから注目はしていたので、じっくり価格を見比べて手に入れたが。それにしても入荷ルートはどうなっているのだろう、何か事情があったのか。


◆『ワーグナーの上演空間』バリー・ミリントン ステュアート・スペンサー編、三宅幸夫 監訳音楽之友社、1997/11
   (蛇足;ニーベルングの「指環」か、ニーベルングの「指輪」か)


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