■ ブリュッセルでのシャリーノのオペラ (2001.4.14)

日本経済新聞・文化往来 (2001.4.14) からの要約です。シャリーノのオペラ 《ルチ・ミエ・トラディトリチ》 の日本語訳は 《私の裏切りの瞳》 でしょうか?雰囲気としては《私を裏切ったあのひと》 ではと思うのですが。大野和士のモネ劇場へのデビューが待ち遠しい。

日欧気鋭の指揮者ら、現代音楽に新風 ドイツのベルリンとベルギーのブリュッセルで、このほど現代音楽祭が開かれた。欧州と日本の気鋭の指揮者が活気のみなぎる演奏を披露したのが印象的だった。

3月中旬に開かれたベルリン・ビエンナーレ。クライマックスは17日にフィルハーモニーで行われた演奏会。サイモン・ラトル指揮ベルリン・フィルが、グリゼーの「モジュラシオン」、メシアン晩年の大作「彼方の閃光」を演奏し、色彩と構造が一体となった現代フランス音楽の大きな流れを実感させた。若い聴衆中心に満席となった会場の熱気も、特筆に値する。来年9月に音楽監督に就任するラトルは早くも、現地に新風を吹き込んでいる。

一方、ブリュッセルで3月中旬から4月初めにかけて開かれた「アルス・ムジカ」。注目を集めたのは、イタリアの作曲家、S・シャリーノのオペラ《ルチ・ミエ・トラディトリチ》の新演出による公演だ。シャリーノは、1947年生まれ。今回上演されたのは、98年に書かれた彼の近作だ。数奇な運命をたどったルネサンスの作曲家をめぐるストーリーを軸に、明解な構造の下、特殊奏法を多用した繊細にして清新な独自の音宇宙が形成される。

見事に様式化された舞台を創り上げた演出のT・ブラウンと共に絶賛を受けたのが、力強いリーダーシップで、モネ劇場管弦楽団と歌手たちをまとめあげた大野和士の指揮だった。来年秋から、劇場の音楽監督となる大野にとって、今回の成功の意義は大きい。



戻る