■ ヴェルディ没後100年記念 特別演奏会 《レクイエム》 (2001.4.26)

今日の座席は前から3列目でほぼ中央、こんな真っ正面の席は初めて。文字通り指揮者の汗が飛び散るのを実感できるのではと期待。これだけ前の席だとすべて一色になってしまう、音色にしても、ダイナミック・レンジにしても。ほとんど強弱のバランスが分からない。合唱が頭の上を通り過ぎて行く。その代わり、大野和士の指揮を間近にじっくりと見ることができた。すべて暗譜、オーケストラへの指示、沈着な指揮ぶりがよくわかった。歌手とのアイコンタクトがわかるのも面白い。

会場はオーチャードホール。例によってピークでの混変調歪みが耳につく。私の耳のせいではないでしょう。合唱がフォルテで歪む、ステージの反射板の影響かなと思うのだが。興ざめするものです、しかしそんなことは熱演に吹き飛んでしまいました。オーケストラ配置はどうなのでしょう。ビオラ群を右手に置きましたが、声楽とのバランスに配慮したのでしょうか。

ダイナミックかつバランスの取れた熱演と感じました。レクイエムにダイナミックとはアンマッチな表現ですが、ヴェルディの音楽がそうなのだからしょうがないですね。細かな神経が演奏のすみずみまで行き渡っていました。オーケストラの配置にしても、合唱にしても。合唱は座って歌っていましたが、強奏では起って歌わせました。一発ぶちかまし?の大太鼓でしょうか圧倒的な力感で効果的でした。歌謡的な部分が沢山ありますが、これとダイナミックな箇所への切り換え感が素敵です。

独唱陣も好調だったと思います。グレゴリー・フランク (バリトン) ちょっと唐突なフォルテに驚いたときがありました。マルコ・ベルティ (テノール) テノールの本領発揮、甘い声でした。メゾ・ソプラノ 寺谷千枝子 落ち着いていました。緑川マリ (ソプラノ) まさにプリマドンナの貫禄十分。最高音の調子がいまいちだったでしょうか?でもこれだけ間近で見聞きするとあの迫力が忘れられません。

ちょっとオーケストラが荒いなと感じたのは私だけでしょうか、それとも座席のせい?最期は緑川まりと大野和士の協奏でした。オペラチックな演奏を堪能しましたね。それにしても演奏会の雰囲気が良いと思います。大野和士の成長を見守ろうという、暖かい無言のメッセージが溢れています。後で気が着いたのですが、列の端にいたのは江川紹子さんでしょうか。



東京フィルハーモニー交響楽団 特別演奏会 ヴェルディ没後100年記念 特別演奏会
ヴェルディ:レクイエム 指揮:大野和士
ソプラノ:緑川マリ メゾ・ソプラノ:寺谷千枝子 テノール:マルコ・ベルティ バス:グレゴリー・フランク
合唱:東京オペラシンガーズ




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