■ もちろん「図」が万全ではない (2003.9.2)

日経コンピュータ (2003.1.27号)のコラム「情識常識」に、面白い記事が載っていた。

コンサルティング会社に業務要件の整理を依頼したのだが、半年間のコンサルティングの成果は、プレゼンテーション用ソフトで作られた大量の絵の印刷物だったとのこと。それぞれの絵には、業務の現状と今後あるべき姿が綺麗に描かれてはいたのだが、分かりやすい絵にするために、個々の業務内容の記述がしばしば省略されていた。このままでは、システム設計作業には入れない、「これは紙芝居だ」とその企業の担当者は怒っているようだ。

絵は確かに重要である。あるべき仕事の流れとそれを支えるシステムの全体像を1枚にまとめた絵があれば担当者は自分の仕事が全体のどこにあるあたるのかが、すぐ分かる。

しかし、実際に情報システムを設計し構築するにあたっては、絵だけでは到底無理である。全体の絵を次々に細分化し、最終的にはコンピュータで処理できる、矛盾のない業務要件にまで分解しなければならない。

■ 『図で考える人は仕事ができる』 箇条書きは思考を停止させる (2003.8.15)


GE前会長のジャック・ウェルチが、改革を推し進める上で大きな助けになったのは、一枚のシンプルな図だったという。明快な説得力の高い図解で、ウェルチの戦略を伝え、実現するのに大きな働きをなした。

1つめの円はGEの核になる製造事業群で、従来からGEが得意としていて今後も高収益の見込める大型家電・照明・タービン・輸送機器などの各部門が含まれている。2つめは将来的に高収益の見込めるハイテク事業群で、医療機器・特殊素材・航空宇宙分野などが含まれている。3番めがサービス事業群で、こちらは比較的少ない投資で高収益の得られる金融・情報・原子力発電所のメンテナンスサービスなどが含まれる。この3つの円に入らない事業が、「再建か、売却か、閉鎖」の対象になるということだ。

なぜ図で考えるとよいのか
・いろいろな情報を関連づけて一目でわかってしまう
論理的関係、人間関係、地理的関係、時系列上の関係、そして強い関係、弱い関係、近い関係、遠い関係など、物ごとの関係にはさまざまなものがある。これらをストレートに表現できる。
・具体的に考えられる。全体の構造を描いてみることによって、状況が客観視できる。
・瞬時に全体像がつかめる
・バランスよい思考ができる。問題部分の点検が簡単に行える。
・みんなに正確に伝わる
・外国人にも問題の核心がわかる
◆図解は物ごとの関係性を大胆に表現できる反面、微妙なニュアンスやディテールを表すのが不向き

図解はこうして描こう
・まず大きくとらえる。鳥の目をもつ。大胆に、そして細心に
・キーワードを見つける。図解はキーワードの固まり
マルと矢印を使うだけで十分

文章表現の限界
・最後まで読み通さないと全体像がつかめない
新しい言葉の定義や関連したことがらの説明が入ったりすると、話が脇道へそれてしまい、文章全体の見通しが悪くなる。
・一目瞭然、一瞬にして全体像がわかるようには書けない
・達意の文章家でなければ自由自在に思うところを表現することはなかなか難しい
◆箇条書きの習慣から抜け出そう〜箇条書きは思考を停止させる
それぞれの項目間の関係が箇条書きでは表現されない。大小、上下、因果関係など。箇条書きでは全体の構造や部分間の関係を表せない、体系的でもない


◆『図で考える人は仕事ができる』久恒啓一、日本経済新聞社、2002/5

◆久恒啓一 (ひさつね・けいいち) 1950年生まれ。九州大学法学部卒業、73年日本航空に入り、ロンドン空港支店、客室本部、広報課長、サービス委員会事務局次長などを歴任。在社中から「知的生産の技術研究会」での勉強会の成果をもとに著作活動を行う。97年同社を早期退職し、新設の県立宮城大学教授に就任。現在、同大学事業構想学部教授。


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