■ 五味康祐のオーディオで聴くレコードコンサート(第14回) ――レコードとテープの魅力―― (2012.5.6)
練馬区役所 本庁舎 4階会議室にて。2012.5.6(日) 15:30〜17:00(Bグループ)
このコンサートも14回を重ねている。区役所の会議室に30人ほどの参加。抽選でかなりの倍率のようである。司会は区役所の方か。講師は元ティアックの唐金利生氏。
今回はテーマが「レコードとテープ」とのことで、唐金氏が整備された五味さん愛用のテープデッキが加わった。また、以前の写真(↓)と比べるとプレーヤーやアンプ等には変化は見られないものの、オートグラフの下に敷かれていた置台が取り除かれている。音質改善のためか。たしかに、旧五味邸に設置されたオートグラフは床に直置きのようである。
五味康祐氏は既に没後32年とのこと。オートグラフも半世紀を経た。唐金氏によれば、最近のオートグラフは響きも落ち着いて絶好調とのことだ。ゆったりとしたスケールの大きな響きを楽しみました。
最初は@のテープ演奏。19cm4トラックとのことだ。聴き手も、まだ眠気から覚めないのか、どうもメリハリのはっきりしない音に聞こえる。Bの演奏からは、オートグラフも本来の調子を発揮したように思う。モノラルのギーゼキングの演奏もしっかりと中央に定位して聞こえる。
C、Dとも良い響きでした。CDを聞き慣れた耳には、やや録音の古さを感じるのだが、さすがにグリュミオーの演奏スタイルは古くても、芯の強いヴァイオリンです。ハスキルのピアノがバックに控える様子も聞き取れる。Eの弦楽四重奏団も4人の奏者の弾きぶりが伝わってきます。
最後はまたテープに戻りAが演奏された。38cm2トラックとのこと。かすかにヒスノイズがあるのでアナログ録音と思われるが、さすがに最新録音に匹敵するもの。静かなピアノ独奏から始まり、強大なフォルテまでダイナミックレンジの広い録音。まったく破綻なくオートグラフは眼前にピアノを現出する。ピアノはどこか落ち着いた響きだ――スタインウェイではない?
<曲目>
【テープ】
◆@ホルスト:組曲《惑星》から「木星」
ウィリアム・スタインバーグ指揮 ボストン交響楽団 [1968年?録音](DGG XG1077)
◆Aリスト:《巡礼の年第2年 イタリア》から「ベネツィアとナポリ」の第1曲「ゴンドラをこぐ女」
ピアノ:ガーボール・ガボシュ [1969年5月キングレコードで録音](TEAC CLUBプライベート盤)
【LPレコード】
◆Bメンデルスゾーン:《無言歌集》から第30番「春の歌」
ピアノ:ワルター・ギーゼキング [1956年録音](Angel 35428)
◆Cヴィヴァルディ:《四季》から「春」
イ・ムジチ合奏団 ヴァイオリン:フェリックス・アーヨ [1958/1959年録音](Philips SFX-7507)
◆Dベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ第5番《春》
ヴァイオリン:アルチュール・グリュミオー、ピアノ:クララ・ハスキル [1956年録音](EPIC LC3400)
◆Eモーツァルト:弦楽四重奏曲 第14番
アマデウス弦楽四重奏団 [1964年録音](DGG 138 909)
<使用機器>
LPレコードプレーヤー:EMT930ST、カートリッジ:EMT TSD−15
プリアンプ:McIntosh C−22、メインアンプ:McIntosh MC−275
スピーカー:TANNOY AUTOGRAPH 1964年製
オープンリールテープデッキ:TEAC製R−313Cテープデッキをベースにアンプ部を改造した五味康祐氏特注品
■ 五味康祐のオートグラフを聞く (2) (2009.11.8)
かの令名の高い、五味康祐が慈しんでいた、タンノイ・オートグラフを聞くことができた。このオートグラフは現在、練馬区の文化振興協会で管理されており、今まで数回のコンサートが開催されてきた。参加希望者が多くいつも抽選とのことだ。
五味康祐氏のオーディオで聴くレコードコンサート(第4回) 〜スピーカーという楽器〜 2009.11.8(日)
今回もかなり高率の抽選だったとのことだが、前回に続きなんとか当たりくじを引き当て、題記のコンサートに行くことができた。前回はピアノ他の独奏曲が中心だったが、今回はオーケストラものが中心。
<曲目>
◆マーラー:交響曲第5番 第4楽章 バーンスタイン指揮 ニューヨーク・フィル
◆ベートーヴェン:交響曲第9番 第4楽章 ベーム指揮 ウィーンフィル
今回は解説に、エソテリック/ティアックから唐金氏ほかが参加され、興味深い話――英国のタンノイ工場の訪問とか――を聞くことができた。コンサート会場は練馬区役所の4F会議室なのだが、ほぼ五味さんのオーディオルームと同じ広さとのことだ。
座席が最前列のちょうど左スピーカの真ん前という位置になってしまった。ほぼスピーカーまで2メートル強の距離。前に座る人にも邪魔されずに直接音が聞けて、これはラッキーと思ったのだが。しかし、音が鳴り出した瞬間に、バックロード・ホーンのすぐ面前に座るという愚行に気づいたのであった。
中高音だけが鳴っているようでまったくバランスが悪い。ちょっと情けない音である。ときに、タンノイの素性を感じさせるような、演奏だったのだが。途中で席交代もできず、今回は残念ながら聴取位置の失敗であった。バーンスタインのマーラーはCBSの外盤、ベームの第九は国内盤だったか。
<使用機器>
レコードプレーヤー:EMT930ST、カートリッジ:EMT TSD-15
プリアンプ:McIntosh C-22、メインアンプ:McIntosh MC-275
スピーカー:TANNOY Autograph(1964)
■ 五味康祐のオートグラフを聞いた (2009.8.30)
練馬区役所で開かれたレコードコンサートに出向いた。「五味康祐氏のオーディオで聴く レコードコンサート」 (第3回)
日時:平成21(2009)年8月29日(土) 場所:練馬区役所 本庁舎4階会議室
五味康祐は芥川賞受賞の作家としてばかりでなく、「超」の付く、オーディオ・ファンとしても知られていた。なかでもイギリス・タンノイ製のスピーカー「オートグラフ」への傾倒ぶりは、誰にも負けなかった。ついには現地へ飛んで、キャビネットの塗装にまで注文をつけて、日本への輸入第1号(1964年)になったそうだ。昭和55(1980)年、58歳で没した。
五味康祐亡き後、オーディオ装置やレコードなど資料一式を練馬区役所が引き取り、分類整理し公開の事業を行っているとのこと。かの有名なオートグラフの状態はだいぶひどかったようだ。片方のスピーカーはまったく鳴らなかったとのこと。タンノイ本社に問い合わせたりしたが、結局自然治癒だったそうだ。
30畳ほどの会議室にシステムは設置されている。写真でも分かるように、オートグラフの存在感は抜群である。
聴取位置はスピーカーから2メートル半前後である。入場者は30人ぐらいか――今回の抽選倍率は5倍だったとのこと!残念ながら、この位置では人の影響もありステレオ感覚は聞き取れない。
オートグラフ様は、恐れながら、自宅のスターリングと、同質の音だなと感じました。やや硬質の音色であり、中高音に独特の輝きがある。弦などはまさにぴったりの感があり一段と美音が鳴り響く。CDに慣れた耳にはスクラッチノイズが初めは気になる。弱音はエアコンに邪魔されて聞き取れないが。
演奏曲の中ではブタベストSQのベートーヴェンが抜群であった。録音年は1951、52頃とのことだが、もちろんモノ。等身大のスケール感で、生々しいヴァイオリンが聞けた。エネスコのヴァイオリンも同様だが一段と情熱的な演奏が眼前に見える。
ケンプのピアノはどうか。演奏を含めて、ちょっと緩くないか?モラヴィッツのピアノは、録音で名を馳せたものだが、期待はずれ。原因はよく分からないが、オーディオ的には全くのミスマッチ。低音がボーボーと言って音楽にならない。
今日の演奏は室内楽中心であったが、オーケストラとか歌声も聞きたかった。次の機会も抽選になるようだが、楽しみに待ちたい。
【使用機器】
レコードプレーヤ:EMT930ST、カートリッジ:EMT TSD-15
プリアンプ:McIntosh C-22、メインアンプ:McIntosh MC-275
スピーカー:TANNNOY AUTOGRAPH (1964)
【演奏曲目】
◆ベートーヴェン:弦楽四重奏曲 第16番(作品135) ブタペスト弦楽四重奏団(モノ)
◆ベートーヴェン:ピアノソナタ 第31番(作品110) ヴィルヘルム・ケンプ(ステレオ)
◆バッハ:無伴奏ヴァイオリンソナタ 演奏:ジョルジュ・エネスコ(モノ)
◆エリーゼのために ピアノ:モラヴィッツ(ステレオ)