■ 生誕100年記念 三岸好太郎展 (2003.8.31)

三岸好太郎は1903年(明治36年)札幌に生まれた。今年(2003年)は生誕100年とのこと。札幌を皮切りに各地で生誕100年記念三岸好太郎展が開かれている。東京の府中市美術館では7月5日〜8月24日に開催された。

冷夏のなかで真夏の日差しが戻った一日、府中市美術館を訪れた(2003.8.24)。照りつける太陽、湿度も高い。京王線、東府中駅で降りる。広大な都立 府中の森公園のはずれに美術館はある。途中子供たちが水遊びをする池を抜けて徒歩15分か。入館料、800円。

100年展と銘打つだけに好太郎の作品が網羅的に展示されている。なかには個人所有のものもあった。「目を閉じた節子像」など初見参である。画集にも載っていた記憶はないが。簡素なデッサン風だがなかなか良い。

海と射光」(1934年)も現物に接するのは初めて。大胆な構図とメリハリの利いた色彩感覚に圧倒される。強烈な日差しは真夏のものだな。「オーケストラ」(1933年)はあんなに大きかったのか。そして線のタッチがあれほどくっきりとしていたのか。今回ははっきりとチェロ協奏曲であることがわかった。「飛ぶ蝶」(1934年)は、切紙細工の感がある。

会場で求めた本、『三岸好太郎――夭折のモダニスト』(工藤欣弥・寺嶋弘道著、北海道新聞社、昭和63/4)に興味深い文章があった。好太郎の本質をついているだろう。

蝶のイメージ
好太郎は短い生涯を、画風遍歴のうちに終えた。それは、ストーリーに応じて仮面をつけ、衣装を変えなければ舞台に上がることのできない道化役者にたとえられる。あるいは、変態によって成虫となり空間へ飛び立つ蝶にもたとえられよう。あるいはまた、オーケストラに。女に。花に。等々……。好太郎の取り上げたモティーフは、すべてが変身をテーマにしているとも考えられる。

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