■ 『百歳までの読書術』 地域図書館が活躍  (2015.9.5)




著者の津野海太郎さんは、いま77歳かな。70歳をすぎたあたりから体力・気力・記憶力がすさまじい速度でおとろえはじめたのを実感したという。
自分も津野さんと大きな年齢差はない。「おとろえた」とのひと言一言に、「そうそう」とうなずくばかりである。

本書のテーマは、「70歳からの読書術」だという。これから新しい読書スタイルを考えなければいけないというのだ。
著者は、地元図書館を使いこなすことを、提案し実践している。示唆にとんだアイデアだ。


蔵書を減らすのは、なかなかうまくいかない。あとは、新しい本をできるだけ増やさないようにすることしかない。買うかわりに図書館に向かうこと
近年は、全国でつぎつぎと蔵書目録が電子化されている。OPAC(オーパック)と呼ぶそうだ。インターネットでだれもが自由に利用できる。
このOPACのおかげで、近所の図書館がこれまでとはまったく別の性格のものになったという。

地元の図書館のウェブ・サイトから、すべての市立図書館群の電子化された蔵書目録を横断検索できる!!
見つかった本は、オンラインで予約可能であり、早ければ数日後には近所の図書館に本がとどく。
複数の地域図書館の蔵書目録が電子的に統合されたことで、大学図書館クラスの蔵書をもつ巨大図書館がとつぜん身近に出現したのだ。
――当然ながら、横浜市でもまったく同じ状況である。

なにかテーマをかかえて必要な資料をさがすというような場合、よほど特殊なものでなければ、たいていのことは地域の図書館ネットワークでまにあう。
ベストセラーの新刊となると、そうはいかないが、50人待ち程度なら、1年か1年半で順番がまわってくることもある。


■ 『百歳までの読書術』 津野海太郎、本の雑誌社、2015/7
   ◆老人読書もけっこう過激なのだ
  (壱)
  ◆本を捨てない人たち◆減らすのだって楽じゃない◆路上読書の終わり◆新しいクセ◆遅読がよくて速読はダメなのか◆月光読書という夢
  ◆「正しい読書」なんてあるの?◆本を増やさない法◆近所の図書館を使いこなす◆退職老人、図書館に行く◆渡部型と中野型
  (弐)
  ◆背丈がちぢまった◆ニベもない話◆私の時代が遠ざかる◆もの忘れ日記◆漢字が書けない◆老人演技がへたになった◆八方にでてパッと凍る
  ◆(死者の国)から◆本から本へ渡り歩く◆老人にしかできない読書◆ロマンチック・トライアングル
  (参)
  ◆映画はカプセルの中で◆いまに興味がない◆病院にも「本の道」があった◆幻覚に見放されて◆友だちは大切にしなければ◆書くよりも読む方がいい
  ◆むかしの本を読みかえす◆怖くもなんともない◆古いタイプライター◆もうろくのレッスン

■ 津野海太郎(つの・かいたろう) 1938年生まれ。晶文社の編集責任者。
    「季刊・本とコンピュータ」編集長。和光大学教授・図書館長をつとめる。現在は評論家。

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