■ 『オスは生きているムダなのか』 それぞれの役割がある (2013.2.12)




なぜオスとメスがあるのか。性があることには、一般的に大きなメリットが2つあるといわれている。一つは、遺伝的な多様性の増大ということ。もう一つは遺伝子の修復。遺伝的な多様性が増えることは進化に有利である。特に環境がどんどん変わるときはバリエーションが多い方が有利である。

遺伝子の損傷の修復は多細胞生物では減数分裂のときに行われる。人間は、紫外線・放射線・薬物等々、遺伝子を損傷させる物質にさらされて生きている。だから、どう修復するかは重要だ。

一方、性にはエネルギーと時間がものすごくかかる。オスは少々エネルギーと時間をかけても、自分の精子が卵に入る以外に生き延びる方法がないから、何とかメスに寄生して生き延びようとする。しかしメスにとって、性はコストがかかるばかりだ。できれば自分だけで子どもを作ったほうが効率がいい

生物の進化が、遺伝子を含むDNAの突然変異と自然選択だけで生じるものであれば、オスもメスも進化に貢献する割合は同程度であるが、細胞内のDNAをコントロールするシステムの変異もまた大きな要因だとすると、卵を次世代に伝えていくメスのほうがはるかに重要度は高くなる。だから、ヒトでも男より女のほうが重要なのだ。

さまざまなデータから、女の人は書字能力、書いたり読んだりする能力が高く、男の人は科学的な能力、空間認識の能力が高いようだ。遺伝的な違いなのか、後天的な教育のせいかは分かっていないのだが。男の人は、すごく優秀な男から、できない男までいて、能力にバラつきが大きく偏差が大きい。女の人はどちらかというとコンパクトにまとまっていて平均的であると言えそうだ。


◆ 『オスは生きているムダなのか』 池田清彦、角川選書、平成22(2010)/9

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