■ 『スティーブ・ジョブズ驚異のプレゼン』 人びとを惹きつける18の法則 (2013.4.23)



スティーブジョブズの訃報を聞いたのは2011年10月だったか。すでに3年になろうとしている。本書の刊行も3年前。内容が陳腐化していないかとの懸念があるが。プロローグでは、ジョブズのやり方を正確に学びさえすれば、誰でも、あのすごいプレゼン力をものにできる、と言っている。

しかし、何よりも重要なのは、プレゼンテーションすべき対象――ジョブズの場合はアップルの製品だった――の訴求力がぬきんでたものでなければならない、ということだろう。ダサイ製品をもとに、すばらしいプレゼンを作り上げることなど、あり得ないと強く思う。プレゼンの出来具合が製品の性能を超えることはできないと。

プレゼンをまとめるものとして本書には18の法則が登場する(↓下に羅列してある)。あまりピンとこないので、独断と偏見で、はしょって3つに集約してみた――本書の言うとおりに!

@準備に思い切って時間をかけること、A3のルールを常に念頭におくこと、Bメッセージは大胆に明快であること

はじめに、アナログな手段――鉛筆とかメモ用紙などを活用してアイデアを絞り出すこと。わくわくするようなストーリーの作り方を具体的に検討する。ストーリーに力がなければならない。スティーブ・ジョブズはストーリーを組み立てるときは紙と鉛筆という昔ながらの方法を使う。アナログ世界でアイデアをざっくりとまとめる。

1時間のプレゼンテーションを作るには、90時間もの準備が必要だという。最初の27時間(30パーセント)は、話の種を探す、専門家に話を聞く、アイデアを整理する、仲間と話をする、話の流れを大まかに組み立てる、といったことに費やすのだ。

次に、聞き手に受け取ってほしい3つのメッセージを書き出そう。メモなしで簡単に思いだせるように考えること。3点で構成することが大切、聞き手が迷子にならないのだ。
ベストセラー『マジカルナンバー7+2』が言うように、我々の頭が短期記憶に保持できる情報はごく少量である。楽に思いだせるのは3項目から4項目である。ジョブズは「3点ルール」がパワフルなコミュニケーション理論であることをよく理解し活用した。

最後に、図をつかって、メッセージを強く明快に伝えること。プレゼンテーションが終わるまでに少なくとも2回は伝えることだ。

『スティーブ・ジョブズの流儀』に書いてあるというエピソードが印象的だ。――ジョブズは1996年にアップルに戻り、経営の実権を握った。当時アップルには製品が40種類もあり消費者を混乱させていた。経営陣を前にして、ジョブズは大きな田の字をホワイトボードに描き、その上に「消費者」「プロ」、横に「ポータブル」「デスクトップ」と書き入れた。コンピューターは4種類に絞る。ノートが2種類、デスクトップが2種類ということ。製品を大胆に削減するというメッセージをジョブズは明快に示したのだ。

日本の会社のプレゼンの最大の問題点は、スライドがあまりにも情報過多であること。大胆さに欠けていることだという。

【18の法則】
<ストーリーを作る>
1 構想はアナログでまとめる
2 一番大事な問いに答える
3 救世主的な目的意識を持つ
4 ツイッターのようなヘッドラインを作る
5 ロードマップを描く
6 敵役を導入する
7 正義の味方を登場させる

<体験を提供する>
8 禅の心で伝える
9 数字をドレスアップする
10「びっくりするほどキレがいい」言葉を使う
11 ステージを共有する
12 小道具を上手に使う
13「うっそー!」な瞬間を演出する

<仕上げと練習を行う>
14 存在感の出し方を身につける
15 簡単そうに見せる
16 目的に合った服装をする
17 台本を捨てる
18 楽しむ


◆ 『スティーブ・ジョブズ驚異のプレゼン 人びとを惹きつける18の法則』カーマイン・ガロ/井口耕二訳、日経BP社、2010/7

    HOME      読書ノートIndex     ≪≪ 前の読書ノートへ    次の読書ノートへ ≫≫