■ 『宇宙からみた生命史』 宇宙から生命の種が来た (2024-3-24)

 





スペインの画家・レメディオス・バロの描いた、奇妙な《星かゆ》というタイトルの絵が本書で紹介されている。
星を集めたものをおかゆにして、月に食べさせている、という不思議な図柄だ。
まさに「宇宙で生成した有機物から生命が誕生した」という著者のテーマにぴったりではないか。
いま宇宙を構成する元素は明らかになっている。物質を構成する元素は地球でも宇宙でも同じだという。
文字通り、私たちはスターチャイルド(星の子)なのだ。


地球に降りそそぐ隕石の中には炭素を多く含むものがあるそうだ。アミノ酸が確認された例もある。また、彗星にもいろいろな有機物が含まれているという。これらの有機物が原始地球の海に届けられ、それらがさらに反応して生命となったのか。海は生命のふるさとという、新しいシナリオが考えられるという。

隕石や彗星のアミノ酸が、太陽系のできる前に暗黒星雲の中ですでにできていたのだろう。宇宙空間には低濃度ながら原子や分子、それに塵などが浮いている。塵にはメタノールやアンモニアが貼り付いている。生命の種を少しだけ含む物質が宇宙空間ですでに存在していたのだ。太陽系ができると、強い光にあぶられたり調理されたりして、それらは生命のもととなる物質として進化してきた。

これらが、地球に隕石や彗星によって届けられたのだろう。そして、海底熱水噴出孔のような環境でさらに化学進化し、ついには生命が誕生したのではないか。
水深2600メートルの海底から煙突が突き出し、もくもくと煙のように濁った海水が噴き出しているのが今でも見られる。300℃を超える超高温の海で生命は誕生したのだ。無生物から生物への進化にはエネルギーが必要。マグマからは膨大な熱エネルギーをもらえる。
多細胞生物の誕生は、遺伝子の系統樹解析などから、10億年くらい前だろう。カンブリア大爆発では、現存の動物の門の全ての先祖が現れたとされる(門とは、昆虫などの節足動物門など)。地上には強烈な紫外線が降り注いでいた。有機物で構成された地球生命は紫外線のもとでは生きられない。オゾン層の誕生によって、生物は海中から陸上に進出する。30億年以上にわたり海洋で生育・進化をつづけ、陸上に進出したのはたかだか4億年前である。

地球の歴史の上で、生物の大絶滅は複数回起こったらしい。興味を引くのは6500万年前の大量絶滅だ。全ての恐竜に加えて海洋のプランクトンや植物種の多く、アンモナイトも絶滅した。新世代の哺乳類や鳥類の繁栄へと続いた。
大量絶滅は、全球凍結と同じく、進化の駆動力になるという。大絶滅により生物圏が縮小した場合、遺伝子の変化により生じる変異が、その生物にとって有利に働く確率が高まるからだ。平穏期にも遺伝子の変異は、ある確率で起きるが、そこで生じる形質の変化はその生物にとって中立もしくは不利に働くことが多い。

さらに、太陽光が長期にわたって遮断されることで、大幅な温度の低下を招く。温度の低下と植物の光合成の停止により動物にも影響がおよぶ。当時の生態系の頂点に立っていた恐竜が最も深刻な打撃を受けて絶滅したのだ。そして、生物種が激減した後の世界ではあらたな機能を持った生物が生き延びる可能性が高まる。それまで小さくなって暮らしていた哺乳類が主役となった。さらにその中から類人猿が誕生し、ホモサピエンスが誕生する。

太陽系には地球の仲間がいるはずだ。地球で起きたことは100億光年かなたの銀河内の惑星でも起こりうる。唯一地球のみが生命を宿しているとは考えられない。膨大な数のハビタブルゾーンが銀河に広がっている。極限環境生物学によれば、ハビタブルゾーンのみが生命可能な領域でないことがわかってきた。高温、低温、強酸性、強アルカリ性、極度の乾燥、……そのような環境にも微生物が生きている。成層圏、地底深く、海底の熱水噴出孔周辺などにも。生物に致命的と考えられる過酸化物すらエネルギー源に利用している微生物も発見されたという。


◆ 『宇宙からみた生命史』 小林憲正、ちくま新書、2016/8

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