■ 『アクティブ・ラーニングとは何か』 学び方改革の目玉 (2020.3.3)







アクティブ・ラーニングとは、なんとなく雰囲気は伝わるが、聞き慣れない言葉である。
中央教育審議会(中教審)が2016年12月の答申で「学び方改革」を謳ったが、そのなかで目玉とした施策であるという。
アクティブ・ラーニングとは、プレゼンテーションやディスカッションのようなさまざまなアクティビティ(学習技法)を介して、
学習者が能動的に学びに取り組んで行くこと。この2020年度にはいよいよ、この答申に従った施策が本格的に実行されるそうだ。




戦前〜戦後へと教育改革として種々のチャレンジが繰り返されてきた。戦前の主体は、いわゆる「チョーク&トーク」(一斉講義式)のスタイルで「知識注入型授業」と言われるものだ。
知識の咀嚼に追われて、生徒が受動的な姿勢になりがちだった。戦後は問題解決型学習へと変革が進む。1970年代後半には、詰めこみ教育見直しが行われ、ゆとり教育が出てくる。
1990年には、「知識注入型」を脱し、生徒が主体になって学ぶ獲得型が主張されるようになった。

次期学習指導要領等に向けて2016年には教育課程の大転換が行われる。この審議では、新しい時代に必要となる資質・能力を3段階にまとめている。
@生きて働く「知識・技能」、 A未知の状況にも対応できる「思考力・判断力・表現力」、 B学びを人生や社会に生かそうとする「学びに向かう力・人間性」。
何を知っているか、という観点だけでなく、何ができるようになるか、という観点で発展することを目指している。中心テーマが「アクティブ・ラーニング」である。
表現力やコミュニケーション力が求められる現代社会の実際に対応している。

アクティブ・ラーニングは多様な学習形態を含むものである。あらゆる能動的な学習とも言える。書く・話す・発表するなどの活動への関与が必要である。
実現するための授業には様々な型があるだろう。探求活動型、意見発表・交換型、社会活動型、理解深化型、芸術・創作活動型とか。
たとえば、理解深化型とは、学習について客観的に振り返る活動である。データの整理・分析やレポートなどのまとめの活動と、
教員による思考の活性化を促す説明や解説などを含んだものである。

世界的潮流として、知識の詰め込みが中心の授業から、学習者が主体となる学びに向けて比重を移している。
種々の学習技法を駆使するアクティブ・ラーニングへの移行が、日本でスムーズに進むだろいうか?
教育予算がGDPの2.9%しかなく、OECD加盟国中最下位(34位)という状況から早急に脱却することが必要。
時間と労力と費用を集中的に投下して、教師がゆとりをもって授業と生徒指導に集中できる環境をつくることが求められる。

学校で教える知識は今後ますます速いスピードで陳腐化していく。これまで主流だった知識伝達の機能の大部分が近い将来AIにとって代わられるだろう。
学びの場としての学校に残される最後の機能は、人と人との直接的コミュニケーションであり、そこで展開される互恵的な学びだろうか。


◆ 『アクティブ・ラーニングとは何か』 渡部淳、岩波新書、2020/1

    HOME      読書ノートIndex     ≪≪ 前の読書ノートへ    次の読書ノートへ ≫≫