■ 《ラ・ボエーム》 井上道義・東フィルの好演 (2004.10.3)

上野の東京文化会館では小沢征爾の振るウィーン国立歌劇場の公演があったようである。小泉純一郎首相も 《ドン・ジョバンニ》 を観賞したとのこと。こちらは雨の中、初台の新国立劇場へ出向き、プッチーニ 《ラ・ボエーム》 を観てきた。2004.10.3 (日)。



指揮:井上 道義 演出:粟國 淳
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団

ミミ:アディーネ・ニテスク
ロドルフォ:ジェイムズ・ヴァレンティ
マルチェッロ:カール=マグヌス・フレドリクソン
ムゼッタ:水嶋 育
ショナール:河野 克典
コッリーネ:シャオリャン・リー


プッチーニのオペラの中でも 《ラ・ボエーム》 は第一に好きなもの。耳になじんだ名曲、わが名はミミ、ムゼッタのワルツ、がある。オーケストレーション――シンフォニックな響きとリリックな調べの対応――が抜群に効果的でもある。

今回が新国立デビューとのことだが、指揮・井上道義のポリシーの徹底した演奏だったのではないだろうか。テンポは全体的にゆったりと遅めであった。第1幕のミミの登場の場面など特にテンポを落とす。そして慈しむように弦を響かせのが印象的であった。その後のムゼッタとはテンポでも細かく対照的である。各幕の性格付けにも納得、終幕へと盛り上げる。

第3幕・第4幕と進むに従い、メリハリの効いたドラマチックな演奏となる。特に弦楽器が存分に歌っている。今夜の東フィルは好調だ。ミミをバックアップするヴァリオリン・ソロも聞かせどころがあった。オケ・ピットをのぞくとコンサートマスターは荒井英治さんでした。最終幕の幕切れ、雪のふるなか4Fの観客席ではそこここで鼻をすすりあげるのが聞こえました。切ない青春の甘酸っぱさを思いおこさせる。

ミミはよかった。よくコントロールされた声・演技でした。ロドルフォ、マルチェッロも可。河野克典(バリトン)さん、やや精彩なしでした。水嶋育(ソプラノ)さん、ちょっと平板に感じたのですが頑張りました。

舞台はドラクロアを思わせる色調、奇をてらったところのないオーソドックスな演出。100点です。第2幕などは現実感のあるセットで新国立のメカならではの動きのあるもの。群衆の扱いも効果的でした。


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