■ 『話すチカラ』 インプットには3倍必要 (2020.4.28)
TBSの日曜日のラジオ番組「安住伸一郎の日曜天国」をよく聞いている。冒頭のほぼ30分は安住アナの週間日誌といったしゃべりでくつろいだ雰囲気である。人を引きつける話しぶりに、この人はアナウンサーという職業をこえて一家言をもっているなと思っていた。たまたま書店に平積みされていた、この本を目にして躊躇なく手に取りレジに向かったのである。「話し方のツボがすべてわかる!」との惹句が腰巻きの文句だ。
本書は安住が後輩の現役明大生たちを前に語った内容をまとめたもの。学生は齋藤孝教授のもとで学んでいる。安住は齋藤教授と明治大学で師弟関係にあった。安住は、姉の影響もあって、中学・高校の国語教諭になろうと思っていたそうだ。「人前で話すことへの情熱」や、「日本語に対する探究心」は齋藤先生の授業を受けて教職を目指していた頃から変わっていません、という。
さすがに生放送の現場で培われた安住の言葉には説得力があり実戦的だ。冒頭のテーマは「わかりやすく話す」。人の集中力は、たったの15秒程度で切れてしまうという。例えばCMの多くは15秒でつくられている。だから、わかりやすく話すことは15秒以内で短く話すことが肝要。そして、15秒単位で話を組み立てること。45秒であれば「序破急」の意識をもって3分割する。60秒であれば「起承転結」の4分割だ。
余計な言葉を入れないことを強く意識する。話したい内容を明確に持つクセをつけることが重要だという。「えー」「あのー」といったノイズをなくすこと。自分が話すときのクセに気づくことから始めよう。「えー」「あのー」「まあ」などを連発していると、「思考がまとまっていない」と受けとられる。これだけは伝えたい、という情報を強く意識して、優先順位の高いものから話すこと。
「笑い」への態度は安住独特のスタンスかな。勇気を出して「笑い」をとりにいこうという。ユーモアのセンスには、価値観や情報の新しさなど人間性が表れる。面白いことをまったく言おうとしない人は、その場に対する貢献度が低いとさえ思うと。
他人の3倍のインプットを。仕事でいいアウトプットをしたかったら、その3倍くらいのインプットをしておく必要があるという。できるだけ複合的に大量のインプットを心がけること。こんな新人時代のエピソードが安住にある――初めてもらった夏のボーナスで家電量販店に行き14型のテレビ8台買って、自室に備え付けたという。同じニュースを各局でどう扱っているのか、といったことをチェックしていたという。
◆『話すチカラ』 齋藤孝、安住紳一郎、ダイヤモンド社、2020/2
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