■ 『考える人』 武満徹、内田光子、大野和士 (2005.4.10)
新潮社から出ている季刊誌『考える人』の2005年・春号の特集は「クラシック音楽と本さえあれば」である。
武満徹の書斎の写真が見開き2ページで載っている。壁の全面をふさぐ作りつけの本棚が圧倒する。本好きにとって他人の書棚をのぞくほどの楽しみはないものだが、武満の本棚にどんな本が収まっているかは興味のあるところだ。よくよく虫眼鏡で拡大して見よう。
一隅に吉田秀和全集がずらりと並んでいるのがわかる。ほかに、小林秀雄の『無私の精神』もある。大江健三郎が目立つ。『井上ひさし全芝居』とかも。武満浅香(奥様か?)さんによれば、「どちらかと言えば小説より評論とかエッセイ、哲学書、詩の本を読むほうが好きだったんじゃないか、という気もします」とのことだ。
「内田光子ロングインタビュー」は、バレンボイム指揮シカゴ交響楽団との共演の最中に行われたとのこと。協演はバルトークのピアノ協奏曲第3番である。内田によれば、バルトークの1番はピアノを打楽器として使うという画期的な曲。2番は異常に手が大きくて、ある種の特殊なスタミナがある人でなければ弾けない曲。腕を壊したくないから2番は弾かないとのこと。最後の3番は、パルトークが自分は死ぬと予感して書いている曲だと。昔の古い世界に戻っているという。
読書を聞かれて、「何がなくてもシェイクスピア全集は絶対に必要です。人間だったら必ず持っているはずのものです」と答えている。読書はそのときによって流れがある。日本語で万葉集ばっかり読みたくなる場合もあれば、英語の詩集が馴染むときもあるし、折々の流れがあるという。
音楽家に聞く「好きな本3冊」というのもある。大野和士 (指揮者)の挙げているのは次の3冊。
@高階秀爾『世紀末の美神たち』集英社
Aモンタネッリ『ローマの歴史』藤沢道郎訳、中公文庫
B清少納言『枕草子』岩波書店(新古典文学大系)
残念ながら、@、Aについては未だ手に取ったことがない。これからの楽しみを教えてくれました。B『枕草子』は特に奇をてらったわけではないだろう。このところずーと日本を離れた仕事が続いているが故であろう。作者のみずみずしい感受性に、心洗われる思いがする、と言っている。
◆ 『考える人』 季刊誌 2005年春号、新潮社刊
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