■ インバル指揮・都響 マーラー交響曲シリーズ


■ インバル=都響 新マーラー・ティクルス 交響曲第9番 (2014.3.16)




横浜みなとみらいホール 大ホール 2014.3.16(日) 15時


インバル=都響コンビの期待通りの充実感のある熱演であった。
すっきりした中庸のテンポを守ったものではなかったか。とくに都響の弦アンサンブルに注目。みずみずしい鮮烈な響きを聞かせてくれた。それに随所で活躍するホルンが素晴らしかったですね。
コンサートマスターが矢部達哉が急病のため山本友重に代わったとのこと。

第4楽章が白眉でした。弦合奏がが始まると思わず涙がこぼれそうになるほど、感情移入させられました。素晴らしい弦アンサンブルだ。コンサートマスターの山本さんがよく引っ張た。確かに、この楽章は、諦念と回想が織り混ざって聞こえる。

やはり第1楽章も素晴らしい。叙情の極みとも思わせる。導入部のハープが印象的。
第2楽章は荒々しいのだが。低音がものものしく聞こえる。都響の腕も良いと思うのだが、みなとみらいの大ホールが残響がちょと短いのか、この楽章あたりは、オケの響きが際だって分離よく耳に飛び込んでくる。

第3楽章は演奏が難しそう。厳しい雰囲気が突然変化する。第4楽章のモチーフが現れてくる。この楽章は長い休憩のせいだったのか、ちょっとアンサンブルが乱れたように感じましたが。すぐ回復しました。

座席は、久しぶりに1階席のセンターだったのだが、あいにくと前の席には巨漢が座ることに。終始、指揮者の姿が見えないのはストレスがたまりますね。

指揮:エリアフ・インバル
コンサートマスター:山本友重
管弦楽:東京都交響楽団



■インバル=都響 (新)マーラー・ツィクルス 交響曲第7番

2013.11.8(金) 横浜みなとみらいホール【大ホール】

先週に続いて、インバル=都響コンビのマーラーを聞く。今回は第7交響曲だ。
前回に比べやや空席が目立つよう。こちらの座席はRA席でオケの真横。コントラバスの頭上といったあたり。オケの奮闘ぶりをバッチリ目にすることができる。

木管群は演奏前から練習に余念がなかった。オケの後部にはずらりと打楽器群が並んだ、いかにもマーラーらしく多彩。カウベル、タムタム、むち等々。カウベルの演奏は一部場外が指定されているようだ。名前がわからない――あの金属板を複数つるしたのは何と言うのか、意外と強大な音を発したが。

さすがにインバルの指揮はマーラーを術中にした観がある。精力的に大曲をコントロールした。ややオケの粗さが気になったのだが、座席位置のせいだろうか。こまかなミスも目についたのだが。冒頭のテナーホルン(ワグナー・チューバ?)のソロからちょっとつまづいたかな。

この第7交響曲は何回か耳にしているが、その都度印象が変わる。とくに前半の第1〜3楽章に分裂的な印象が強い。後半の第4、5楽章は対照的だ。優しげなロマンティックな雰囲気の4楽章から、荒々しい暴力的とまで聞こえる終末へと。

第1楽章の暗い雰囲気から始まって。つかの間の響きが繰り返される――ホルンの響き、オケの強奏、静寂、ときに弦の甘い調べ。たしかに、夜の音楽のムードもある。

そして、第4楽章〜終幕の第5楽章へ。第4楽章はメルヘン的とも聞こえる。マンドリンとギターが響く。RA席ではマンドリン・ギターが優しく聞こえる。第5楽章は、爆発的にホルンの強奏から開始。大波のようにフィナーレへと突入。あらゆる楽器が打ち鳴らされ、天地がひっくりかえるほどの大音響で幕を閉じる。

<演奏>
指揮:エリアフ・インバル、管弦楽:東京都交響楽団


■ インバル=都響 (新) マーラー・ツィクルス 交響曲第6番 (2013.11.2)




横浜みなとみらいホール【大ホール】


インバル・都響コンビへの期待でしょうか、客席はほとんど満席で、熱気を感じるほどでした。都響の演奏力の充実ぶりが素晴らしかったですね。いま国内随一ではと、感じました(外国オケは聞いたことがありません)。
インバルの指揮ぶりは端然としたもの。マーラーを満喫した充実度の高い演奏会でした。


この第6交響曲。中間楽章の演奏順には諸説あるとのことだが、本日はスケルツォ→モデラートの順。手持ちのCDもすべてこの順である。近年はこれが定説となっているらしい。

第1楽章。冒頭から緊張感に溢れている。巨大な印象を与える。葬送行進曲とのことだが、激しいリズムを刻む。どこか背中を恐怖で押されるような感じ。時に途中で対照的な柔らかな旋律が現れる――アルマへの賛歌?、が印象に残る。
第2楽章はスケルツォ。やはりこの楽章順序は安定感がある。第1楽章と連結してひとかたまりになって押し寄せる。リズムが継続するようだ。

第3楽章はアンダンテ。どこか追憶的な雰囲気を感じるのだが。弦合奏がゆったりと、ホルンの響きがホールをつつむ――このあたり都響の演奏の特徴が発揮されたのでは。打楽器が活躍、カウベルか

さすがに第4楽章では、アンサンブルの精度が落ちてきたように感じたが、威圧的な合奏である。ハンマーが打ち下ろされたのは3回だったか。座席位置の関係で舞台下手の打楽器奏者は隠れて見えない。どんどん複雑かつ大規模な響きが繰り返されるが、まったく終幕に向けて解決へ導くような光が見えない。この交響曲のニックネームが「悲劇的」だと納得したものだ。

<演奏>
指揮:エリアフ・インバル   管弦楽:東京都交響楽団


■ インバル=都響 マーラー:交響曲第3番 (2012.10.27)




インバルと都響の「新マーラー・ツィクルス」に行ってきた。みなとみらい大ホール。2012.10.27(土)


このところの都響は充実しているのではないか。自己評価では国内ベスト・ワンである。本日の演目はマーラーの交響曲第3番。大がかりな曲でなかなか実演に接する機会がないのだが、都響=インバルのコンビに期待は大きい。



座席はRA席なので、ちょうど第1Vnと相対するような位置関係。インバルの指揮ぶりはよく見える。眼前にオケの響きが分離よく展開する。残念ながらチェロやコントラバスはステージの袖に隠れてまったく見えないし音もよく聞こえない。

期待を裏切らない感動的な演奏だった。インバルの指揮も実に的確だ。オケの意識を高揚させ、第1楽章の快刀乱麻とも言える指揮ぶりから、終幕へと向かう。冒頭のホルンの爽快な総奏から始まって、ときに荒々しい響きを乗り越えて、ついに終楽章に至り、すべてを統合して浄化に導くような趣きだ。最終(第6)楽章は、静かだが透明感のある、余計な思い入れのないすっきりした、深々とした息の長い演奏。この交響曲の白眉だと思う。

第2楽章が終わって、ここで独唱/合唱団が入場。第4楽章のソロの池田香織さん(メゾソプラノ)も誠実な歌いぶりでした。バックのオーボエが、悲しみを誘うような独特で印象的な響き。奏法によるのかな。それにしても、この楽章は、独唱・オーボエ・ホルンなどが細やかなしっとりした響きで対話的な雰囲気だ。

オケの細かな演奏ぶりが見えました。木管群のベルアップの様子とか、トランペットや小太鼓のステージ外での演奏…これはすべて楽譜の指定通りなんですね。全曲を通じて、ホルンのホールをゆさぶる演奏が見事でしたね。

<出演>
指揮:エリアフ・インバル、ソリスト:池田香織(メゾソプラノ)、女声合唱:二期会合唱団、児童合唱:東京少年少女合唱隊、管弦楽:東京都交響楽団 コンサートマスター:四方恭子 (2012.10.27)


■ 交響曲第8番 《千人の交響曲》 (2008.4.29)

エリアフ・インバルが都響のプリンシパル・コンダクターに就任するとのことで、就任披露公演として、マーラーの交響曲第8番《千人の交響曲》が演奏された。――このプリンシパル・コンダクターとは?
2008.4.29(火) ミューザ川崎シンフォニーホールにて


3公演が予定されており、前日には東京文化会館で、明日はサントリーホールとのことだ。オケはフルの大編成。ハープにしても3台が並ぶ。マーラーらしく種々の打楽器も満載。目の前にマンドリン奏者がいたのには終演後に気がついた。もちろんパイプ・オルガンも活躍する。オケの背後には、大規模な合唱団と児童合唱団がならぶ。それにホールの後方(3階だったか)に金管が。第U部ではソプラノも声を響かせた。

残念ながら2階のRA席だったので、まともに耳にできたのは第1・第2のヴァイオリンとかホルンなどの金管群がせいぜい。チェロとかの上手配置の楽器は耳に十分には届かない。

まさに《千人の交響曲》を裏切らない。マーラー演奏での、インバルと都響の相性の良さを実感させる熱演であった。さすがに大編成のオケ/合唱のコントロールするインバルの力はすごい。指揮の様子も、多数の奏者を意識してか、腕の振りが大きな明確なものであった。
第U部の冒頭部、オケが単独で演奏するところ。マーラー最後期の切実なそして真摯な響きが聞こえてくる。ホールの特性か座席位置のせいか、オケの響きに透明感があった。

曲は二部構成なのだが、合唱は前半がラテン語、後半はドイツ語とのことであったがまったく識別することができなかった(!?) テノールの福井敬のいつものように熱情的な歌唱が目に付きましたね。第U部は『ファウスト』からの最終場面とのことだ。残念ながら音響的にしか鑑賞することができなかった。マーラーの歌唱付き交響曲は苦手である。

第T部の幕切れにしても、最終の幕切れにしても、オケと合唱(ホール後方の奏者も)が巨大なマスとなっての演奏は圧倒的であった。インバルは何回もの熱烈なカーテンコールを受けていた。


■ 交響曲第7番 《夜の歌》 (2007.12.14)

東京都交響楽団 第654回 定期演奏会Aシリーズ
インバル指揮 マーラー交響曲第7番《夜の歌》 2007.12.14(金)東京文化会館

このところ、マーラーの交響曲第7番《夜の歌》を聞く機会が増えたような気がする。それもこれも、マンドリンとギターが活躍する、愛らしい第4楽章があればこそではないかなと思う。生オケの演奏に接したのは、たしか札幌のバレンボイム/シュターツカペレが最初だった。→ こちら

今夜のインバルの指揮は、この第4楽章が、とりたてて表情付けが濃いめだったと思う。テンポも非常にゆっくりとして、ていねいな演奏。マンドリンとギターにもたっぷりと弾かせていたようである。優しいトレモロが繰り返され、特徴的である。マンドリンとギターにはエレキ・アンプで増幅はしていなかったようだ。

インバルが大規模オーケストラのコントロールに長けているのは承知していたはずだが、かつて都響とのコンビで、この東京文化会館で、R.シュトラウスの《アルプス交響曲》で感心したことがある。
全曲を通じて、インバルの演奏は明快、明瞭な演奏であった。東京文化会館の短めの残響にマッチして、とてつもなく分離の良いものだ。オケもよく追従していた。終曲でスタミナ切れにはならなかった。

第1楽章は冒頭から、やや暗い雰囲気でもあるが、独特な姿をしたテノール・ホルンが、意外と大きな音量で鳴り響く。ワグナー・チューバとは言わなかったか?ホルンを始めてとして金管群が頑張る。全体のバランスが金管に偏っていないか、コントラバスの存在感がちょっと物足りない。幸福なメロディーと沈鬱な雰囲気が入れ替わる。この辺がマーラー独特。

第2楽章は、「夜曲」と名づけられているようである。どこか牧歌的な雰囲気。ホルンは舞台の外からも吹いていたのか。カウベルまで鳴って楽しいものだ。第3楽章はスケルツォ。第4楽章も「夜曲」。マンドリン、ギターの出番。インバルは特徴付けを意識して振ったようである。

第5楽章は、前の第4楽章から切れ目なしに突発的にティンパニの強烈な連打で開始。打楽器が勢揃いする、もちろんカウベルから……。クラリネットとかの管楽器が、管を中空に持ちあげるようにして吹くのは、何という奏法なのか?フィナーレは、ここ一番の頑張りどころ、とてつもないオケの咆哮だ。

それにしても、この最終楽章。何回も何回も波状攻撃が繰り返されてフィナーレへようやく到達する。ちょっとじりじりする曲想である。素晴らしい演奏でした。会場からも大きな拍手で共感しました。


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