■ ショルティの指揮した《タンホイザー》 序曲 (2007.2.25)




このジャケット写真、ロンドンレコード発売10周年記念・ギョルグ・ショルティ来日記念発売と銘打たれているレコードのもの。キングレコードから1963(昭和38)年に発売された、「ショルティ/ワーグナー名演集」(日本ロンドンSLC-1207)である。

ワグナーの序曲集。《リエンチ》、《さまよえるオランダ人》、さらに《タンホイザー》はパリ版の序曲とバッカナーレ。が収められている。演奏は、ギョルグ・ショルティ指揮、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団とウィーン楽友協会合唱団

このレコード、今は亡きオーディオノートのK社長の愛聴盤であった。特に《タンホイザー》序曲を聞くと、元気が出ると言っていた。会社経営の苦しい時期にもくり返し聞いたようだ。通夜の席に、自社製品の真空管アンプを通して、流れたのもこの《タンホイザー》序曲であった。演奏は、これもK社長の信奉していたトスカニーニ指揮のNBC交響楽団。

学生時代に、このロンドン・レコードをK社長からさんざん聞かされた。冒頭の弦のささやきから、楽器の数が増えて、次第に巡礼の合唱へと大きく広がる。さらにトロンボーンの力強い全奏から絢爛たるバッカナーレまで。ワグナーの魔術にどっぷりと引き込まれてしまった。

この曲を聴かされたオーディオ装置にも強く影響されたようである。もちろんアナログ装置。カートリッジはサテン――独創的なメカニズムだと覚えている。渦巻き状のコイルを採用したムービングコイル型だったはず。シルキータッチと謳われ、弦楽器の再生が得意だと、当時話題ではなかったか、アウトプットは、STAXのイヤー・スピーカー。コンデンサー型で、これは現役で今も製品開発を継続していますね。

この演奏の録音は、「超」録音で話題になった「ニーベルングの指環」の《ラインの黄金》がリリーズされ、次作の《ジークフリート》の録音を始めた頃か。ショルティも、油の乗りきったまだ40歳代だったはずだ。録音はDECCAプロデューサーのカルショウが担当した名録音であった。このコンビで、ウィーンフィルを耳元でたっぷりと聴かされたのだからたまらない。たちまち、サテン・STAX・ショルティ〜ワグナーのファンにならないわけがない。

レコードの発売は1963年で、価格は2000円。当時学生の身分ではとても手は出ない。自分の手元に置けたのは、ようやく社会人になってから、それも中古品であった。その後、同じ内容のCDも手にしたのだが、かつてのレコードに聞いた感激はとても戻らない。ショルティにはシカゴ交響楽団を振った新しい録音もあるが、このレコードはもちろん旧録音。

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