■ 『スマホが学力を破壊する』 衝撃の調査結果だ (2018.9.22)
このところのスマホの普及ぶりはどうだろう。ネコもシャクシもといった陳腐な言い回しでは追いつかない。かなりの人がスマホ依存症にとりつかれているのでは。本書によれば、平成28(2016)年の、15〜69歳の個人スマホ所持率は64.5%とのこと(民間調査)。なかでも青少年のスマホ利用率は高校生で特に高く、内閣府の調査では94.8%とのこと。
本書は、スマホの普及に危機感をいだく著者が、7万人の子どもたちを対象に、数年間にわたって行われた大規模調査の結果を基に、スマホやアプリの使用がもたらす影響を解明したものだ。使用に付帯するリスク、とりわけ子どもたちによる長時間使用の危険性や,成績に及ぼされる影響についてはあまり知られていないのだから。
最初の章が衝撃的、「スマホを使うだけで成績が下がる!?」とは。平成25年度仙台市標準学力検査、仙台市生活・学習状況調査の結果(⇒グラフ1-1)に基づいている。
数学テストの平均点を対象にしているのだが、著者のまとめは大略こうだ。
@長時間携帯・スマホを使用する生徒の学力が低い
A携帯・スマホの使用により家庭学習時間が減少し、これが直接学力低下の元となっている可能性は低い
B自宅学習をほぼしない生徒で、携帯。スマホ使用時間の長い生徒の成績が低くなることから推測すると、学校での学習に悪影響を与える何かが生徒の脳に生じた可能性がある
この調査には、まだまだ、考慮すべき要素や解釈に対する問題点がある。
@携帯・スマホを使ってゲームもしていることを調査の前提とするべき
A単年度の調査では、携帯・スマホをつかったことで学力が下がったのか、学力の低い生徒がスマホを長時間使用する傾向があるのか区別ができない
B携帯・スマホを長時間使用したことにより睡眠時間が減少して学力が低下した可能性がある(学力低下は睡眠不足が原因なのであり、携帯・スマホの使用が原因でないかもしれない)
スマホの影響度は、まだこれからも精緻な分析が必要である。
とくに、LINE等インスタントメッセンジャーについてはどうか。
スマホ等の長時間使用では、テレビを見ながら、スマホ等を操作し、かつゲームもするといった、
複数のことを同時に行う――マルチタスクを行っていると推測される。
とくにLINEのユーザはマルチタスクの傾向が強い。
マルチタスクが、脳の作動記憶という認知能力を低下させている可能性があり得る。
作動記憶とは、理解・学習・推論などの認知的課題の遂行中に情報を一時的に保持する機能だ。
それにしても、ビル・ゲイツやスティーブ・ジョブズが、自分の子どもにはスマホとかのデジタル機器を持たせないそうだが、本当だろうかどこか示唆的ではある。
◆ 『スマホが学力を破壊する』 川島隆太、集英社新書、2018/3
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