■ 阪哲朗 指揮 ベートーヴェン 《ミサ・ソレムニス》 (2003.10.10)

東フィルの第680回定期演奏会はベートーヴェンの《ミサ・ソレムニス》(2003.10.8[水]、オーチャード・ホール)
1.キリエ 2.グロリア 3.クレド 4.サンクトゥス 5.アニュス・デイ

指揮:阪哲朗
ソプラノ:菅 英三子、アルト:井坂 恵、テナー:福井 敬、バス:木村 俊光
合唱:東京オペラシンガーズ

この《ミサ・ソレムニス》、日ごろ聞く機会がありません。CDにしても持っているのはわずかにトスカニーニの古い演奏のみ。

阪さんの演奏は、冒頭のキリエから、しっかりした的確なテンポ。壮大な合唱。このあとグロリアは一転して、激しい急速なテンポでしたが、全体的に「誠実」という印象を大きく受けた演奏でした。合唱のコントロールも万全で、これからも阪さんに注目しなければいけないな、と改めて確認しました。

これだけの大曲・編成をまとめ、外面的効果にとらわれないで、求心的なメッセージを聴衆に伝えるためには、並々ならぬ力量が必要と推察します。

オケはいわゆる古典的な対向配置で、曲中に頻出するフーガでは効果的でした。意図どおりの成果ですね。弦楽器はヴィブラートを抑えたピリオド演奏というのでしょうか、分離の良い透明な響きでした。そして、オーボエのヒューマンな響きが抜群でした。プロには、佐竹正史さんとありましたので憶えておきます。ホルンにはいつも緊張感を感じるのですが、今回はOK。

ソリストは、オケと合唱の間に立ちました。テナーの福井さんは大きな身振りにちょっと違和感がありましたが、素晴らしい声で圧倒されました。バスの木村さんはさすがにベテランでした。

オーチャード・ホールの音響には不満があります。特に合唱がフォルテになると、反射音の歪みが耳につきます。3階席では特に激しいようで残念です。


■ 阪 哲朗 指揮 《フィガロの結婚》 (2002.10.14)

2002年10月13日(日)、国立音楽大学 大学院オペラを聞いてきた。こちらのキャンパスを訪れるのは初めて。多摩都市モノレールの玉川上水駅から歩いて6分ほど。秋晴れの気持ちの良い一日、やや汗ばむ感もあったが、都心から離れて空気も澄んでいる。緑も潤沢。落ち着いた雰囲気のなかに講堂がある。

演目は モーツァルト 《フィガロの結婚》、演奏は国立音楽大学オーケストラ、指揮は阪哲朗。会場の講堂大ホールは、阪さんの人気でしょうか、ぎっしりの満席である。開演間際になんとか中央席に潜り込んだ。

4幕の3時間を超える長丁場、これだけの舞台を緊張感をもって乗り切るのは、やはり指揮者の力が大きいですね。阪さんは終始実に精力的に振り抜き、丁寧な指示を与えていました。オーケストラも立派に応えて、序曲から好調でした。女声の独唱に木管がからむ時、もう一歩ニュアンスが欲しいなと感じる時がありましたが、モーツァルトを楽しむのに不満はありませんでした。

スザンナの鈴木裕子さんに感心しました。ケルビーノは役得です。伯爵夫人には第3幕あたり、いま少し色気が欲しいなと思いましたが。舞台装置はシンプルですが十分。コストパフォーマンスの高い演奏会でした。ところで阪さんはこれからも国内で振るのでしょうか?

<キャスト>
指揮 阪哲朗、演出 中村敬一、副指揮/合唱指導 松井和彦、管弦楽 国立音楽大学オーケストラ

アルマヴィーヴァ伯爵 押川 浩士、伯爵夫人 東野 静香、スザンナ 新井紘子(1・2幕)、鈴木裕子(3・4幕)、フィガロ 折河宏治、ケルビーノ 坂井田真美子 ほか


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