■ バルシャイのバルトーク (2003.2.23)
バルシャイ/東京都交響楽団のマーラー交響曲第10番が話題になっている。残念ながら聞きそびれてしまったのだが、バルシャイが補筆完成したものを自身で指揮している
(2003.2.7東京文化会館、2003.2.8サントリーホール)。朝日新聞・音楽評(2003.2.13)で長木誠司さんも話題にしている。要約すると。バルシャイは、残された簡易総譜を尊重しつつも、かなり想像力に富んだ補筆を試みているという。ギターが置かれ、チューバは2本になる。マリンバが2台用意され要所で硬い響きを加える。ショスタコーヴィチの世界に限りなく近づいていると。
マーラーの代わりと言っては何だが、2003都民芸術フェスティバル オーケストラ・シリーズでバルシャイ指揮の東京都交響楽団を聞いた
(東京芸術劇場大ホール、2003.2.12)。
・ウェーバー:序曲《幽霊の支配者》
・ストラヴィンスキー:バレエ音楽《ミューズの神を率いるアポロ》
・メンデルスゾーン:ヴァイオリン協奏曲 ニ短調(1951年発見)ヴァイオリン:矢部達哉
・チャイコフスキー:幻想序曲《ロメオとジュリエット》
メンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲は、あの有名なホ短調とは違って冒頭からヴィヴァルディを思わせる響き。第2楽章とか、ときにメンデルスゾーン13歳のみずみずしさを感じはするものの、習作的な趣きが強い。チャイコフスキーの 《ロメオとジュリエット》 だが、バルシャイの指揮はいかにも職人とも言える腕の冴えを見せた。すっきりした演奏であった。ここぞとばかり出没するチャイコフスキー得意の甘美なメロディーも、あっさりと振り抜いてしまうのである。都響には木管群に頑張りを期待したい。もう少し色気を出して欲しかった。ハーモニーも濁って聞こえました。
バルシャイと言えば、60年代に発売された、バルトークの嬉遊曲のレコードが忘れられない(←写真)。このレコードが日本デビューだったはずだ。第1面がバルトークの《弦楽のための嬉遊曲》、第2面はヴィヴァルディの合奏協奏曲
(調和の幻想)。ルドルフ・バルシャイ指揮 モスクワ室内管弦楽団 SLC1229 (C)1963。小林利之さんの解説を読むと。ルドルフ・バルシャイ指揮する13人からなるモスクワ室内合奏団がエジンバラ音楽祭に出演して驚嘆のまととなり、英デッカが録音スタッフをモスクワに送って録音したとある。
演奏・録音共に鮮烈なものであった。特にバルトーク冒頭の弦合奏。分厚い響きながらも、厳しいリズムを刻む合奏に圧倒された覚えがある。当時の英デッカの特色であった、艶のある弦の響きが重なる。この録音のCD化は鶴首していたのであるが、ようやく70周年記念でポリグラムから発売された(POCL-4538)。帯には世界初CD化とのコメントあり。やはりあの艶やかな響きはCDからは聞こえてこない。英デッカのイコライジングの魔術か、あの弦の輝きはLP特有のものだったのだ。
添付された延山優樹さんの解説によると、バルシャイは1924年生まれとのことだ(2003年は79歳ですか)。モスクワ音楽院でヴァイオリンとヴィオラを学び、モスクワ音楽院弦楽四重奏団とチャイコフスキー弦楽四重奏団のヴァイオリニストとして活躍。1960年の「プラハの春」ではコーガン、ロストロポーヴィチとトリオを組んで話題を呼ぶ。1956年にモスクワ音楽院の卒業生でモスクワ室内管弦楽団を創設しその指揮者となった。1962年にイギリスのエディンバラ音楽祭に登場し現代的なセンスとアンサンブルが驚嘆の的になったとのこと。1977年
イスラエルに亡命。1983年以降はボーマンス交響楽団、ヴァンクーヴァー交響楽団の音楽監督とのこと。
Producer:MICHAEL BREMNER Engineer:KENNETH WILKINSON
Location:DECCA STUDIO NO.3,London
Date:June 30-July 1,1962
◆ バルシャイのショスタコーヴィチは → こちら
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