■ R・シュトラウス 《エレクトラ》 (2003.6.16)

NHK交響楽団の、2003年6月C定期公演はR・シュトラウスの歌劇 《エレクトラ》 。6月14日(土) NHKホールのマチネーを聞いた。指揮はシャルル・デュトワ。デュトワは任期最後の定期公演とのことだ。

配役は次の通り。
・エレクトラ:エリザベス・コンネル(ソプラノ)
・クリテムネストラ:ジェーン・ヘンシェル(メゾ・ソプラノ)
・クリソテミス:エファ・マリア・ウェストブルック(ソプラノ)
・オレスト:デイヴィッド・ピットマン・ジェニングス(バリトン)
・エギスト:ジークフリート・イェルザレム(テノール)
・合唱:二期会

圧倒的な演奏であった。本年N響のベストワンではないか。NHKホールの舞台一杯にオーケストラが広がり、合計は120名近くになったのでは。これだけ大規模なオケで、これだけの合奏をこれまで聞いたことがない。力強いフォルテ、燦然と輝く金管、時には艶っぽい響きを奏でる弦楽器、いやがうえにも緊張を高める打楽器などなど。R・シュトラウスのスコアは素人考えでも、「超」複雑だと思われるのだが。デュトワは万全の指揮でした。オペラ経験の有無は無関係ですね。

冒頭のアガメムノンのテーマによる不協和音によるアタックから、緊張感溢れるもの。これからの演奏を予感させてゾクゾクさせるものであった。エレクトラとオレストの再会の場面なども、すごい音楽でした。

歌手陣はいずれもスコアも手にせず、演奏会形式とはいいながらほとんどオペラ並みの熱演であった。それにしても、本場のドラマティック・ソプラノの声の威力は凄い。3階席まで、オケの強奏を飛び越えて、突き刺さってくる感じである。大編成のオケに負けてしまうのでは、との懸念は杞憂であった。エレクトラのコンネルは、狂熱的な性格にぴったり。第一人者とのことで納得。ほとんど歌いっぱなしだから――それもフォルテで――スタミナもたいしたものだ。クリソテミスのウェストブルックはピンチヒッターのようですが、こちらも本格的。日本人歌手とは声量の差がありすぎました。

イェルザレムは、LDの《ニーベルングの指環》のジークフリートでお馴染みでしたが、残念ながら出番が少なかった。



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